EC運営を行うと様々なデータが取得でき、自社データを連携させて、マーケティングの効率化や戦略的な意思決定を行おうとしている企業も多くなってきました。
そういった事例は大手が多いからうちはまだ・・・といっても勝手に売上は上がってはくれません。
しかし、データ分析に関して情報量が多く何から手を付けて良いかわからないまま日々の業務に忙殺されているEC事業者も多いのではないでしょうか。
こちらの記事ではEC売上アップのためのデータ分析の第一歩を解説します。
目次
ECデータ分析の3つのポイント
EC売上拡大のためのデータ分析ポイントは「現状把握」、「施策の立案・実行」、「その検証」の大きく3つです。
現状把握は事実となるデータの数値化です。
施策の立案はその数値の何をどう変化させたいか、そのために必要なデータは何か、という観点。検証は実際の数値に変化があったのか、を見に行くことです。
どうしても分析といわれると身構えてしまいがちですが、肩肘張らずに「売上アップのために見るべき指標を明確にする」と大枠を捉えていただければと思います。
では具体的にどうしていけば良いのか、例をもとに見ていきましょう。
データ分析をシンプルに考える
データ分析というと高度な分析ツールを導入して難しい統計ロジックを用いて・・・、と捉えてしまうと二の足を踏んでしまいます。
データ分析はあくまで手段・手法です。
事実としてあるデータを施策に活かす、と捉えれば少し身近になってくるのではないでしょうか。
では、カートシステムから出てくる日々の売上や顧客情報をどう活かせば良いのでしょうか。
まずシンプルに売上の分析について、整理しておきましょう。
経費を抑え収益を上げるという考えも必要ですが、ここではわかりやすく売上でみることにします。
売上 = 総顧客数 × 顧客単価
このモデル式がすべてではありませんが、「使える」観点の1つです。
シンプルゆえに売上アップのためには顧客を増やす、単価を上げる、の2点に絞られます。
集客のためのプロモーションもCRMと言われる領域も、いかに顧客数を伸ばすか、単価を上げるか、というポイントにつながっているはずです。
上記の式をさらに分解すると下記になります。
総顧客数 = 新規顧客 + リピート顧客
顧客単価 = 購入回数 × 1点あたり商品単価 × 1回あたり購入点数
顧客は新規とリピータに分類でき、顧客単価も商品単価と購入点数に分解できます。
例えば、既存顧客が売上の5割のECの場合、既存顧客が1割上がれば売上5%アップが目指せます。
商品単価を変更することは容易ではないですが、点数を増やす施策は検討できるかもしれません。(よくある1注文で●円以上なら送料無料、などがそれにあたるかと思います。)
さて、ここで気をつけるべき注意点が2つあります。
1つ目の注意点は値引きです。
商品単価は決まっていますが、送料無料やクーポン、ポイントによる値引きをどう扱うか、という観点です。
会計上の売上は値引きも加味せねばなりませんが、ここでのお話はデータを施策に活かすという観点です。
1注文で複数商品を購入した場合は値引き分を各商品で按分する、などは集計の難易度をあげてしまうだけです。
値引きの扱いは各社によって考え方・扱いが異なりますが、プロモーション施策やCRM施策の1つと捉えられますので、別集計として押さえておけば良いでしょう。
別管理することで、例えば、クーポン発行したことでの顧客数や購入点数への影響を見ることが可能になります。
2つ目の注意点はデータの分割です。
単品商材ではなく多商材を扱うECの場合は、商品カテゴリーごとなどに分割しましょう。
全体数値も必要ですが、商品により違いが出てくる場合は商品分類を行うことも大切になってきます。
月間レベルでこういった集計ができると売上構成と推移がどうなっているのか把握できます。
データ活用できていない、とおっしゃるEC担当者は意外とこの数値をきちんと把握できていないことも多いので、まずはこのデータ集計からはじめましょう。
データ活用の実践
データ把握ができても売上は上がりません。
データから施策の立案・実行・検証までおこなって行きましょう。
新規顧客を増やす、リピート率を上げる、など変化させたい数値を明確にすれば施策の検証までが可能です。
このPDCAを回していくことがデータ活用=データ分析です。
例えば、新規顧客を増やすためには、新たにサイトに訪問してもらい、購入してもらう必要がありますので下記のようなモデル式でアップ施策を考えていきます。
新規顧客 = サイト流入数 × 購入率
サイト流入を促すためには広告施策が有用ですが、広告ごとに購入率も異なってきます。またサイト自体のつくりや使い勝手、商品ページの見せ方・情報量、は購入率に直結してきます。
初回の訪問者に見せるべきコンテンツなども検討していく必要があるかもしれません。
こういった施策面の話がでてきて初めてカートの売上以外のデータも見ていく必要が出てきます。
この例で言うと広告効果データやWebアクセス解析データです。
データ分析が語られる際に、多くはこういったデータを一元管理して集計・分析しましょう、と言われますが、必ずしも最初から一元管理する必要はありません。
どういった施策で何の指標を変化させたいのか、という目的とその検証を行うことがまず第一歩です。
検証しやすい環境としてのデータ一元管理、検証精度を上げるための分析ツール、です。
これに加え施策の効率化の観点まで一緒に語られてしまうので、データ分析、というと現状からのジャンプアップを求められるように思われてしまいがちですが、まずはわかりやすい指標の数値化からステップアップを目指していただければと思います。
ここまでご理解いただければ、あとはパターンが増えるだけのお話しです。
既存顧客にはメルマガに代表されるCRM施策。単価改善にはレコメンドなどの施策。そしてそれに関連するデータ、といった具合です。
バリエーションが増えても目的と施策が整理できれば、各種データの見るべき指標も明確になっていきます。そうなってくると、リピート率の高い初回訪問元への露出強化、商品ごとの顧客層にマッチしたメルマガコンテンツ、未購入者へのクーポン露出など、よくデータ活用の成功事例に挙がるような施策も決してジャンプアップした話しではありません。
もちろん扱うデータが増えて施策も増えてくればデータ収集・集計や施策を効率化していくことも大切になってきます。ですが、最初に手段・環境ありきで考えてしまうと、結局、何をどうして良いのかわからなくなってしまいかねません。
さて、こういったデータ活用をしていくことで新たな視点が得られることも多いと思います。
例えば、広告ごとの定期購入者の継続率やカートの離脱率など、見たい、見るべきだと思える指標も出てくることと思います。
こちらも目的・施策・検証の観点でデータ指標を整理していくことでPDCAを回すことができるようになりますので、一足飛びに多角的なデータ活用を目指すのではなく、順次ステップアップを目指していっていただければと思います。
最後に
極力シンプルに話しを進めましたが、実際には把握すべきデータが取れていない、データの連携(紐付け)ができないなど、実作業時にネックが出てくることもあろうかと思います。ですが、目的が明確であれば最短ルートでゴールに向かうこともできますし、関係者とのコミュニケーションも齟齬が生じないかと思います。
施策面の戦略・優先度については、現状数値の捉え方や自社のビジネス環境、健康食品や化粧品のようなリピート型ECなのか?流通・小売などの多商品を扱うECなのか?など、サイトによっても当然異なってきます。
記事中の例がしっくりこなかった方も、業務の中で何らかの数値はご覧になっていることと思います。
「直帰率高すぎないか?」といったご自身の気になる点があれば、その数値の把握・改善施策の検討から始めてみるのも良いかと思います。
事実をもとに目的を決めてPDCAを回す、それがデータ分析です。