最近動画系のバナーが増えたなぁ…。うちでもやってみようかな。とお思いの方も多いかと思います。動画広告は盛り上がりを見せてきており、各メディアの方でも力を入れてきている商品です。まさに黎明期にある「今」、動画広告についてご案内致します。
目次
1.なぜ、動画広告が流行ってきているのか
一番身近な「動画広告」といえば、TVCMです。企業が「動画広告」を実施したいと思ったら、最初にTVCMが選択肢に上がってくるでしょう。しかし、TVCMを実施するには製作費、広告出稿費共に多くの金額がかかります。
また、インターネットの普及により、ユーザーのTVを視聴する時間は減り、代わりにパソコンや携帯を使用する時間が長くなってきました。特に若い層ではその傾向は顕著です。さらにHDDの登場によってCMを見ずに録画した番組だけを視聴するユーザーも増えてきています。TVCMだけでは国内の多くのユーザーへ自社のCMを見てもらうのは難しい状況になってきています。
そうした中、インターネット回線の品質向上、スマートフォンの登場などにより、以前と比べインターネット環境の中で動画を視聴する人が増えてきました。
また、TVCMに比べインターネットの「動画広告」は、製作費、出稿費共に安価で済みます。
そういった世の中の状況とテクノロジーの進化がちょうどマッチした「今」インターネットの「動画広告」が流行してきているのです。
以降の章では「インターネットの動画広告」を「動画広告」とだけ記載させていただきます。
TVCMとインターネットの動画広告(Web動画広告)のクリエイティブの違いについてはこちらの記事で触れています。
2.「動画広告」の種類
「動画広告」は大きく分けて2種類あります。「プレロール」と「インバナー」です。
●プレロール
「プレロール」は動画専門サイトなどで動画視聴をする際、指定動画の前に再生されるタイプのものです。
みなさんも見たことがあるのではないでしょうか。多くの場合は「5秒後にスキップできます」などのメッセージが表示される、スキップ機能がついています。
ユーザーは「動画を見る」つもりでそのサイトを訪れており、そのため、TVCMと似た印象を受けるかと思います。実際、配信されている広告を見るとTVCMを流用したものが多いように感じます。
※下図、黄色部分に「動画広告」が表示されるイメージです。
【プレロール型動画広告メニューのある代表的なメディア】
・YouTube
・ニコニコ動画
・各動画専門サイト
●インバナー
「インバナー」は様々なサイトに設置されている広告バナースペースに表示される動画です。「プレロール」に比べるとサイズは小さくなりますが、露出面が多いのが特徴です。
ただし、ユーザーはそのサイトに「動画を見る」つもりで訪れているわけではありません。また「インバナー」にはインプレッション課金のタイプが多く、仮にユーザーが配信された「動画広告」をきちんと見ていなくとも課金対象になってしまう可能性があります。
※下図、黄色部分に「動画広告」が表示されるイメージです
【インバナー型動画広告メニューのある代表的なメディア】
・Yahoo!
・日経電子版
・動画対応している各種サイト(ポータルサイト・ニュースサイト等)
●それぞれのオススメ
「プレロール」は高い訴求力が特徴です。TVCM的な要素が高いため「TVCM素材を持っている」というような場合にはこちらを実施するのをオススメします。特にYouTubeのTrueViewなどは視聴完了課金(課金体系については次項で説明)ということもあり金額面でもハードルは低く、すでに多くの企業が実施されているメニューです。獲得系に向いていない訳ではありませんが、ブランド認知や商品紹介などに特にオススメです。
「インバナー」の場合、「プレロール」に比べ、表示サイズが小さくなりますが、幅広くリーチできるのが最大のメリットです。TVCM素材をそのまま流すよりは「動画広告」用の素材を作成したほうが良いかと思います。クリエイティブ次第ではありますが、獲得系の訴求でも合うのではないかと思います。
3.「動画広告」の指標について
「動画広告」の課金形態ですが、インプレッション課金、視聴課金のどちらかが多いです。視聴課金とは「視聴開始した状態」から課金される形態のことになります。他、視聴完了課金という形態もあり、こちらは「視聴完了した状態」で初めて課金されます。インターネット広告の多くはインプレッション課金かクリック課金のため、視聴課金と言われても相場観がピンと来ないかと思います。「プレロール」「インバナー」ともに他インターネット広告手法でよく使われるインプレッション単価(CPM)で見てみると、おおよそ500円~2000円程度になります。リスティングやディスプレイ広告などの平均インプレッション単価は100円~200円程度のため、「動画広告」を実施する際、多くの方がそのインプレッション単価に驚きます。
そのためか、各社が出している「動画広告」の事例を見てみると、インプレッション単価ではなく、クリック単価で「動画広告」の良さを伝えているものが多いです。確かにクリック単価は静止画バナーよりも高くなるという結果をよく聞きますが、それには誤クリックも多く含まれている気がします。
インターネット広告では直接的な効果を求めがちですが、「動画広告」にそれが当てはまるのでしょうか。
「1.なぜ、動画広告が流行ってきているのか」でご案内した通り、元々「動画広告」といえば、多くの方がTVCMを思い浮かべるはずです。現在のインターネット「動画広告」でもTVCMの素材を流用するなど、TVCMのような動画を作成し配信しているのがほとんどです。しかし、TVCMの場合、インターネット広告のようなインプレッション課金も、視聴課金もありません。また、クリックや、ましてやコンバージョンなどという指標は出てきません。
なぜならTVCMの役割として企業が求めているのは「ブランド訴求」や「商品認知」などだからです。
ではなぜ、TVCMと同じような使用の仕方をしているにも関わらず、インターネット「動画広告」ではクリックやコンバージョンを静止画バナーやリスティングの実績と並べて考えるのでしょうか。
それはインターネット「動画広告」であればそういった数値を取ることができるからです。TVCMの場合、その効果を測るためにはTVCMを視聴したユーザーにアンケートなどでその効果を計測することしかできません。
もし、インターネット「動画広告」にTVCMのような使い方を求めているのであれば、その指標もTVCMに準じたものにするべきです。
また、そうではなく、静止画バナーやリスティングなどと同様の指標で考えたい場合は、インターネット「動画広告」用のクリエイティブをきちんと作成する必要があります。TVを見ているユーザーとインターネットをしているユーザーではそのメディアに向かう姿勢が全く違うからです。
4.「動画広告」に合う業種・訴求について
「動画広告」を実施するにあたり、まずは宣伝したい対象の訴求内容をよく考える必要があります。
たとえば、以下のような商品や訴求内容の場合は「動画広告」が効率よく利用できるはずです。
① サービス内容が複雑→保険業など
② 取扱商品が高額→不動産など
③ ユーザーへ安心感を与えたい→学校など
① サービス内容が複雑→保険業など
「動画」は「静止画」に比べ、多くの情報を提供することができます。
そのため、静止画バナーだけでは伝えきれなかった内容まで詳細に案内することができます。
たとえば、保険会社のようなサービスの場合、ユーザー個人ごとに状況が違うため、保険料も変わってきます。静止画バナーだと、決められた枠の中でそのサービスすべてを訴求するのは難しいですが、動画であればサービスメニューの内容をより深く案内できます。
② 取扱商品が高額→不動産など
取扱商品が高額な不動産などだと、よく見かけるのはマンション外観画像のみや、間取りのみのバナーかと思います。しかしユーザーが知りたいのはその両方です。また、不動産などは高額であるがゆえにユーザーもより多くの情報を求めます。企業ページまできていただければ、その不動産情報詳細を知ってもらうことはできますが、企業ページに来てもらう前に、自社商品について多くの情報を開示できるのは動画広告ならではのメリットです。
③ ユーザーへ安心感を与えたい→学校など
学校や通信教育など、長期間に渡りユーザーに契約いただくようなサービスの場合、ユーザーが気になるのは、学校であれば雰囲気、学校、通信教育共通であればカリキュラムなどかと思います。
これらの情報は静止画バナーだけで伝えるのはかなり難しく、特に授業風景などは画像だけでなく動画を使うことでより現場感をユーザーに伝えることができます。
また、これは広告出稿の事例ではありませんが、海外のECサイトではアウトドア商品などの使い方の動画を商品詳細ページに入れたところ、売上が上がったそうです。「使い方が難しい」「どういったシチュエーションが合っているのか分からない」そういった商品をテキストや画像だけでなく、動画で案内することによって、ユーザーの理解度・安心度が上がるのは確実です。
5.「動画広告」の始め方
いざ、「動画広告」を始めよう!となった場合、何をすればよいか、、、ですが、ざっくり下のような流れになるかと思います。
【すでに動画素材がある場合】
1:KPIを決めた上で、「プレロール」向け素材なのか、「インバナー」向け素材なのか考える
2:「プレロール」、「インバナー」どちら向けか決まったら、それぞれに対応している「動画広告」メディアを選ぶ
3:出稿申し込みを行う
【動画素材がない場合】
1:訴求したい内容とKPIをしっかり決める
2:訴求容やKPIに合った動画素材内容を決める
3:自社のイメージに合った動画素材が作れる製作会社を選ぶ
4:動画素材を作成。
5:【すでに動画素材がある場合】「2」から実施
※動画素材がない場合、2の動画素材内容を決める時点で「プレロール」向けか「インバナー」向けかも考えておくとなお良いです。
リスティングや静止画バナーと比べ、「動画広告」はその素材作成に時間とお金がかかります。そのため、広告実施をする前にきちんと訴求内容とKPIを決めておくことがとても重要です。
また、計測も静止画バナーとは違い「視聴時間」などの取得が重要になってきます。そういった計測ツールの設定なども事前に確認しておくと良いでしょう。
6.最後に
「動画広告」は、冒頭でも記載した通り未だ黎明期にある広告手法です。正直まだその効果などは明確に分かっていません。各社がこぞって「動画広告」の効果的な使い方について模索している最中です。
だからと言って「動画広告を実施しない」という選択肢はもったいないと思います。パソコン、スマートフォンなどを利用することが圧倒的に増えた昨今、インターネットを利用した「動画広告」は確実にTVCMに次ぐブランディング施策になることでしょう。
広告の効果指標や、使い方をよく考えた上で効率的に他広告手法と合わせ活用していくのが、今後のスタンダードになっていくはずです。