化粧品や健康食品などを扱う広告では、薬機法(旧薬事法)上で定められた表現があります。
これらを逸脱すると、法律違反となることはもちろん、広告掲載において必ず必要となる審査で媒体のポリシー違反(非承認)とみなされ、広告掲載ができません。
こうした審査落ちでは、違反対象となる個所がまとめられ、通知が来るわけではないため、どこを修正すればいいのか?わからない……とお悩みの声をよく伺います。
なかでも、よくあるケースが、「NG・グレー表現の文言や、画像などの要素を修正したけど審査が通らない!」というもの。
この記事では、部分修正では対処不可能なケースをご覧いただきながら、根本的な問題点と、対処方法を紹介いたします。
こちらの記事も併せてお読みいただくことをおススメします。
【薬機法】化粧品・健康食品のよくある広告審査落ち表現事例と対策(使用感/口コミ編)
※薬機法の表記は、正しくは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」ですが、この記事では一般的に広く知られている「薬機法」という言葉で解説します。
目次
【薬機法(旧薬事法)と広告】広告クリエイティブの部分修正では、対処が不可能なケースとは?
「医薬品等適正広告基準」をご存じでしょうか?
これは、薬機法(旧薬事法)を、広告実務に則って解釈し、医薬品などの広告が、消費者にとって適正な内容になるよう、厚生労働省が設けたものです。
「医薬品等適正広告基準」の導入部分には、以下の文章があります。
広告が消費者に与える効果は、その表現、内容だけでなく、利用される媒体の性質、広告表現全体の構成や説明の文脈、更には世相によっても異なる。従って、ある広告が違反広告に当たるか否かの評価については、当解説及び留意事項等に記載されている事例や文面のみから形式的に判断されるべきではなく、各種の要素を総合的に考慮して判断する必要があることに留意しなければならない。
上記の記載からわかるとおり、薬機法(旧薬事法)に基づいての広告規制は、
部分的な表現に対してというより、その表現を用いることによって、消費者側に与える効果に対して言及していることがわかります。
これは、消費者を誤認させる不当な広告を禁じている景品表示法(景表法)とも通じる考え方です。
広告を制作する際には、大前提として、
✖ 誤解を与える文言や、画像単体・イラストなど使ってはいけない という、部分最適・部分対処の視点ではなく、
◎ 使用した文言や画像が誤認・誤解を与える表現・印象になっていないか? という、総合的な配慮・判断の視点が必要とされます。
この観点が損なわれた状態で部分修正を重ねても、全体の印象として誤認・誤解を与える内容では、もちろん対処ができません。
イメージが難しい内容かと思いますので、次項から「コンテンツ全体が誤認・誤解を与える内容」をケーススタディで紹介します。
*例にあげる内容として、薬機法違反・景表法違反のものが混在しますが、部分修正では対処できない表現例、としてご覧ください。
【薬機法(旧薬事法)広告審査落ち事例】1.暗示要素が 全体的に散りばめられている
最初にご覧いただく例は、逸脱した表現の対象となるキーワードやイメージをちりばめて暗示を表現しているケースです。
ここでは健康食品を例に紹介します。
以下、2つの画像を見てみましょう。
左は、「飲むだけで、あたかも髪の毛が黒い状態に変化する」ように感じる“漆黒”という単語や、イメージフォトを使用しています。
右は、「飲むだけで、まるで妊娠ができる」かのように示唆する、赤ちゃんのイラストや妊婦のイメージフォトを使用しています。
健康食品は、食品分類にあたるため、本来、薬機法(旧薬事法)の対象にはなりません。
しかし、もしも取扱う商品の表現が、病気の治療や予防、健康の保持・増進の効果に踏み込み、あたかも効果・効能があるかのように明示・暗示した場合、薬機法上では未承認の医薬品広告とみなされます。
加えて、虚偽・誇大な不当表現は、景表法上NGとなりますので、取り扱う商品の表現には十分に注意が必要です。
明確な基準は設けられていないため、審査側の判断によって結果の変動は考えられますが、例にあげたような「特定の部位に対して効果を発揮する」という思想が、制作意図に組み込まれている場合、全体に使用される言葉・色・画像・写真・デザインといった、すべての要素が誤認・暗示要素と判断されることもあります。
こうした場合、部分修正を加えるだけでは、全体の印象を払拭することは難しいでしょう。
【対処方法】
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【薬機法(旧薬事法)広告審査落ち事例】2.開発背景などの「想い」が誤認を与える表現になっている
次にご覧いただく例は、開発背景や製造過程における優位性が誤解を与える表現になっているケースです。
こちらは化粧品分類を例に紹介します。
「医薬品等適正広告基準」では、下記のように、製造方法や研究内容といった広告表現は、消費者に誤解を与えやすい要素として、「過度な表現をしないようにすること」「事実を正確に、強調せずに表現すること」と、明記されています。
2 製造方法関係医薬品等の製造方法について実際の製造方法と異なる表現又はその優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現をしてはならない。 (3)研究について各製造販売業者等が、その製品にかかわる研究内容を述べる場合は、事実を正確に、強調せずに表現すること。
こちらを踏まえたうえでクリエイティブを用意しないと、「製造方法や研究内容の表現が広告的に訴求力をもってしまった」「取り扱う商品の効果効用を裏付けるような展開になってしまった」といったことが予測されます。
例えば、下記のように、「植物の再生力研究」という内容は、「エイジングケアのアイテム」に、期待する効能効果を誇張するので、誤解を生みかねない表現と捉えることができます。
では、一切掲載ができないのか、といえば、そうではありません。
例にあげた情報であっても、「過度な広告的表現を抑える」「広告要素とは別表現で伝える」など、誤認をあたえることのない表現の工夫をすることで掲載することは可能です。
また、それぞれの商品やサービスには、それらを開発した背景やストーリー、企業側の想いなどについても同様に、効果効能の保証をさける構成・デザインのコンテンツであれば、きちんと情報を届けることができると思います。
【対処方法】
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【薬機法(旧薬事法)広告審査落ち事例】3.問題提起の内容が、標ぼう可能な範囲から逸脱している
最後にご覧いただく例は、問題提起の内容に標ぼう可能な範囲から逸脱している表現が含まれるケースです。
こちらも、化粧品分類を例に紹介します。
広告上、読み手の注意を惹く目的で、ターゲットコールと呼ばれる、「●●●●でお悩みのかたへ」や「●●●●が気になりだしたかたに」などの表現を用いることがあります。また、「このような悩みはありませんか?」という呼びかけで、顕在化した悩みを提示することもあります。
一見、よくとられる手法であるため、どこが問題なの?と思われるかもしれません。ですが、広告上の標ぼう可能範囲が決められた商材の広告では、
こうした悩みキーワードに対し、解決手段として商品を訴求する展開になるため、全体が伝えるメッセージとしては逸脱した効果効用を期待させる内容なりえてしまいます。
ですので、使用する言葉や要素をどれだけ変更しても、前提となる問題提起の段階で効果に触れてしまう以上、全体の設計を見直す必要がでてくるのです。
【対象方法】
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薬機法に関わる商材のLP改善・LPOにお困りのかたへ
今回、部分的な修正では対応しきれないケースを、3つご紹介いたしました。
厳密には、薬機法・景表法に関しての判断は、取り扱う商材やサービス内容によって異なります。
そのため、本記事でご紹介した内容に沿ったとしても、承認をお約束できるものではないのですが、考え方と対処法については参考にしていただけるかと思います。
メディックスのアドクリイティブ特化チーム「B-SOKU」では、薬機法・景表法を加味し校閲チェックを行う制作体制です。
審査不承認になりやすい商材でも、過去の知見を用いて広告法規を考慮したうえでクリエイティブを用意することが可能です。
お客様の商材やサービスを理解し、適した表現での訴求をお手伝い致します。
ぜひお気軽にご相談ください。