AI(人工知能)という言葉が昨今至るところで目に入るようになってきています。
広告の出稿やサイト解析、はたまた自動車の自動運転やロボットなど様々な分野で活用されているAIですが、どのような思想で生まれて、どう発展してきたのか?今後どう発展していくのか?を本稿で記載させていただきます。
そもそもAIとはどういったものなのか知りたい方に読んでいただければと思います。
目次
AI-人工知能-とは
AIとは、人間の脳が行っている知的作業(思考や推測、記憶など)を、コンピュータなどの機械によって代替する技術のことを指します。
なお、人間の体(ハード)ではなく、脳による思考など(ソフト)の代替となるため、AIもソフトウェアやシステムのことを指すことが多くなっています。
AIの歴史
AIの起源については、遥か昔の神話などの話も出てくるため、ここではAIが学術的に確立された1956年のダートマス会議以降の歴史について記載します。
〇ルールベースのAI(1960~1980年代)
最初はAIとは言っても単純なルールベースを採用したものでした。
条件に応じてYESかNOで判別する非常にシンプルなものですが、当然、現実で必要な柔軟性を欠き、そもそも現実では多数のルールが必要となるため、AIとして活用するには現実的ではありませんでした。
〇統計・確率を用いたAI(1990年代~現在)
Web上にある様々なデータ(検索キーワード、SNSでの発信、音声、テキスト、画像など)、あるいはGPSに代表される現実世界にある様々なセンサーから取得できるデータ、そういったいわゆるビッグデータを解析して、統計をはかり、行動の確率を予想する、そのようなAIの手法が1990年代後半から登場しました。
これは実際には人間のように思考しているわけではないため、AIとしては邪道という見方もされますが、大量のデータから統計による確率を導き出しているので、結果的にある程度実際の人間の行動パターンを模倣することはできていました。
〇脳科学に基づくAI:ニューラルネットワーク(現在)
ニューラルネットワークとは、脳を構成する無数の神経細胞(ニューロン)のネットワークを人工的に構成しようとする仕組みです。
データを分析して統計を出すAIとの違いとして、AI自身が「学習」するということが挙げられます。
つまり実際の人間と同じように、経験から学習して進化していき、適切な判断を下すようになります。
まさに人工知能と言える仕組みなのです。
実はこの仕組みは1950年代には発表されていましたが、計算するコンピュータの限界などにより長い間不遇の扱いを受けていました。
しかし、現代になってコンピュータのマシンパワーが飛躍的に向上したことと、最新の脳科学の研究成果を取り入れより正確に脳の神経活動を再現する「ディープラーニング」という手法が登場して、一気に脚光を浴びることとなりました。
なお、AIに学習させる方法として代表的なものとしては、入力パターンと出力パターンの対応関係を学習させるパーセプトロンや、ある入力パターンを入れたときに正しい出力パターンが出るようにニューラルネットの重みを調節する誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)があります。
AIのメリット
AIの最大のメリットとしては、高スピードで学習し続けていくことで、人の手が必要なタスク、あるいは人の手では不可能なタスクを行えることです。
もちろん、何も学習していない状態では複雑なタスクを行うことはできないので、予め学習し知識を吸収させておく必要はありますし、状況は常に変化するため学習させ続けていく必要もあります。
しかし、そういった環境が整えば、後はある程度自動で学習してタスクを行ってくれる強みがAIにはあります。
AIの活用事例
前項でAIのメリットについて触れましたが、そのようなメリットを活かして様々な分野で利用されているAIについて、
下記2つは活用事例です。
〇自然言語処理
自然言語処理とは、人間が日常的に読み書きや話しに使う言語をコンピュータに処理させることです。
単語1つだけでは何を意味するのか判別がつかないケースが多いため、予め前提となる知識を学習しておく必要があるので人工機能の学習を活用できること。
また、日常で表現させる言葉は多数あるため、それを高スピードで処理する必要があることが、人工知能の活用と相性が良い分野となっています。
活用事例としては、ECサイトなどで訪問したユーザごとにその趣向に合わせた商品をレコメンドするケースが多々ありますが、
そういったレコメンドにもAIが使用されている場合があります。
〇自動車の自動運転
Googleが自動運転車「Google Car」を発表し、日本の各自動車メーカーも数年先での実用化を掲げたりと何かと話題の事柄ですが、
こちらにも最新のAIが深く関わっています。
自動運転車の基本的な構造は、様々なセンサーから取得したデータをAIで処理して、自動運転を行うというものです。
上記のようにセンサーによって各種データを取得することが可能であり、またセンサーの部品の金額は量産化することで安価な提供が可能になります。
そのためハード面よりも、取得した各種データを如何にAIで判断・処理していくのかというソフト面が、実社会で自動運転を実現する上で非常に大きな要素となってきます。
自動運転を司るAIの基本的な思考は下記のとおりです。
- 自分の行動計画を立てる
- 自分のいる場所を特定
- 自分の周囲にいる歩行者や、ほかの車、あるいは、そのほか障害物の場所を把握
- 自分の動きをコントロールして行動を起こす
自動運転AIの基本はベイズ理論です。
ベイズ理論とは、事前に取得した情報から、ある事象が起こる確率を算出する理論です。
この理論が自動運転にマッチする理由として、算出した事後確率は、最初は不正確かもしれないが実験や測定の結果を反映させることを繰り返すことで、徐々に確率を上げていくところにあります。
現実世界では絶えず状況が変化していくため、1回センターにて測定したデータで車の行動を決定してしまうことは非常に危険がともないます。
よって、繰り返し計測を行い、事後確率を算出し続けることで極めて精度の高い自動運転を可能にしています。
AIとWebマーケティング
現状マーケティング担当者が行っている、各種データを収集し分析して、最適なキャンペーン手法を提案していくということもAIが代わりにやってくれるということも一部で出てきています。
もちろん、熟練のマーケターによるデータ分析の勘所や、各状況に応じたデータ抽出や傾向の測り方など非常に複雑な面が多々あるため、AIだからすべてが上手くいくとは限りません。
しかし、大量のデータを蓄えて分析し、機械学習を重ねることで確率の精度を向上させていく、そうしたことが可能なAIだからこそ、人手では不可能な分野への着手、あるいは人手で行うよりも時間を掛けずに対応できるケースがあることもまた事実です。
ただ、AIの重要な要素である判断・処理のソフト面のチューニングは、やはり熟練した人間の手によって行う必要があります。
また、AIの判断の正当性・妥当性も同じく熟練した人間でなければ判断できないため、
AIによって人手が掛からなくなるというよりは、AIによってそれまで手を出せなかった領域に手を出せるようになる、業務の効率化を図れるという状況に推移していくと思われます。
こちらの記事もお読みください。Eコマースにおける人工知能について述べています。
まとめ
AIは発展を続けており、ハードやソフト面での発展にともない、これまで以上の発展も見込まれます。
特にGoogleがAIをオープンソースソフトウェアとして公開したりと、AIのソフト面での強化は今後ますます発達していくと予測されます。
AIというと近未来SF映画などに出てくるイメージで、現実とは少し遠いイメージを持たれるかもしれませんが、既に身近なところでも使用されています。実際の仕組みを理解して、AIをうまく活用して、どう付き合っていけるのかを考えていただければ、普段の暮らしもより便利になっていくと思われます。
難しいブラックボックスなものと考えずに、触れて理解していくことを是非おすすめします。