もはや、説明不要のECの巨人であるAmazonですが、日本でもその勢いは留まるところを知らず、「ジェトロ世界貿易投資報告」(2017年版)によると日本のEC市場でトップのシェアを誇っています(シェア:20.2%)。また、海外の調査(Market Track調査 2017年)ではEC利用者の58%は何かしらの商品を購入しようとした時にAmazonで商品検索をスタートするという調査結果も出ています。つまり、Amazonという場所は「Amazon内で買う・買わないに関わらず、モノを買おうと考える消費者が最初に訪れる場所」になっています。日本においてもEC事業者にとってはGoogleへの対策が重要なのと同じレベルでAmazon対策が必要な時代がすぐそこに来ています。
この記事ではAmazonの広告を活用した売上アップの施策についてまとめます。
目次
Amazonの影響力
まずはAmazonがいかに大きなサイトであるかを、データから確認してみましょう。
このデータからもわかるように、Amazonの国内でのサイトパワーは、全メディア(EC限らず)の中でもPC、モバイルともに7位と十分にメガメディアと呼べるものです。ECサイトとしては最大級で、ECユーザへのアプローチをしたい場合には欠かせないサイトの1つと言えます。
Amazon広告(Amazon Ads)の種類と特長
それでは、Amazon広告の種類と特長について説明します。Amazon広告は、次のように大きく分けることが出来ます。
広告種別:「純広告」 or「運用型広告」
表示箇所:「Amazon内での表示」 or 「Amazon内表示+Amazonデータを活用した外部サイト表示」
純広告(Amazonサイト内表示)
■役割
ECを利用して購入する意欲の高いユーザへのリーチと、オーディエンスデータを活用した「商品(サービス)告知」
■特長
- 時期と掲載場所、および掲載料を特定した上でAmazon内での「商品(サービス)告知」が可能
- 基本はimp課金(固定)
※繁忙期のスポット利用などに有効
■掲載位置
Amazonでは下図で示した場所に、広告バナーを掲載することができます。
そして、上図で示した掲載位置に、下のターゲティング配信が可能です。※一部広告商品では、ターゲティングができないものもあります。
■ターゲティングの種類
・ライフスタイルターゲティングの詳細セグメント
ライフスタイルのターゲティングの詳細セグメントは、下図のとおりです。Amazonでの購入金額に応じたターゲティングはもちろん、子育てパパ・ママ(小学生)など、かなり細かいレベルでのターゲティングが可能です。ほかのサイトがサイト閲覧やキーワード検索をベースに興味関心やライフスタイルを定めているのに対して、Amazonでは「購入」という、より強い欲求の結果をベースにしたカテゴライズをしています。
・ホットカスタマーターゲティングの詳細セグメント
ホットカスタマーのターゲティング可能項目は、下図のとおりです(こちらは一例です。他商材についても同様の粒度でターゲティング可能です)。
ベビー用品の中でもマタニティグッズを買っている人なのか、チャイルドシートを買っている人なのか、という粒度でターゲティング可能なので、購入商品からライフステージを想定して、より自社商品に合いそうなユーザに対し広告配信をピンポイントに配信できます。
■おすすめの広告メニューと注意点
購入などの実効果を重視する場合、後述する運用型広告の方が向いてます。ここでは、純広告について、ECユーザへの商品告知を役割とした場合のおすすめ商品を紹介します(2018年6月現在の情報です)。純広告は、最低出稿金額が150万円~と少し高額になっています。
【注意!:掲載可否について】 ※2018年6月現在の規定
まずは、ECサイトの販促目的の利用が思いつきますが、その場合は次の条件を満たしたうえで、事前に掲載可否が必要です。注意しましょう。
1. Amazonで販売する商品、およびそのメーカー
掲載可否についてお問い合わせの上、下の条件を満たす場合、「掲載可」となります。
1-1. Amazonで商品を販売している企業
• キャンペーン目的が商品販促で、リンク先がAmazon内ページである
• リンク先がAmazon内ページ以外の際、キャンペーンの目的がブランディングである
1-2. 出店型出品者*(中古品を除く)
• キャンペーン目的が商品販促で、リンク先をAmazon内ページに設定する場合
*出店型出品者とは、商品詳細ページにて「この商品は、XXX(企業・サービス名)が販売、発送します。」と表記されているものを指します。
1-3. サイト内にEC機能があるものは、下記の①~⑤すべての条件を満たしている場合、「掲載可」となります。
① キャンペーン目的が、企業、もしくは商品ブランディングである
② 広告バナーのリンク先(一階層目)に、商品購入機能*がない
③ 広告バナーのリンク先のファーストビュー(縦550px以内)に、商品購入機能を持つページへのリンクがない
④ バナークリエイティブに、Amazon以外のサイトでの商品購入を促す表現が含まれていない
⑤ Amazon指定の掲載禁止企業に該当しない
また、上記を満たしていなくとも、下記⑥の場合は、「掲載可」となります。
⑥ 事業規模が小さいなどの理由で、Amazonにとって競合性が低いと判断する場合
*「商品購入機能」とは、「カートに入れる」ボタンや、ワンクリックで、商品注文情報を変更できるショッピングカート機能などを意味します。
■おすすめの広告メニュー
・プレミアクロススクリーンパッケージ
各デバイスのTOP枠をパッケージにした商品です。リーチもさることながら、インパクトを重視した告知の場合におすすめです。
・リーチパッケージ
各デバイスの中でも視認性の強い枠をパッケージにしています。TOP枠の露出はプレミアムクロススクリーンに比べ落ちるものの、決済完了ページなど閲覧の可能性が高い面で掲載が可能です。
・Run Of Site動画パッケージ
Amazon広告の中で、モバイル、タブレット、デスクトップに横断で掲載できる唯一の動画ソリューションです。インパクトの強い動画を持っているクライアントにおすすめです。
運用型広告1(Amazon AAP)
■役割
・Amazonが持つ膨大なECユーザのオーディエンスデータを活用した「リーチ配信および集客数の確保」
■特長
・配信面がAmazonサイト内のみではなく、Amazon外の提携ネットワーク面に配信可能
・基本は、imp課金(入札制 RTB配信)
・ターゲティング内容は、前述の純広告と同じターゲティングが適用可能。また、それに加えてリターゲティングの配信も可能。
・Amazonオリジナルのレポートがある ※下記の「Audience Segment Overlap Report」 「Audience Segment Report」参照
つまり、AmazonユーザをAmazon外でもターゲティングして広告配信ができるメニューです。当然配信リーチは広がります。さらに、CPMは入札制なので、CPC単価も純広告と比べると安価で流入獲得できます。リターゲティングの配信も可能なため、サイト訪問者が多ければ購入目的でも活用可能です。外部ネットワークは他DSPと同じようないわゆる大手SSPへの接続となり、通常配信するとAmazon内と外部の配信割合は2:8程度になることが多いです(メディックス実績)。効果はやはりAmazonで表示されている広告経由の方が一般的に高いのですが、数の影響力を持つためには外部ネットワークも活用し、外部配信の最適化運用に注力することにより効果の最大化を目指すことがおすすめです。
■推奨配信方法(売上最大化が目的の場合)
リターゲティング+オーディエンスカテゴリ(Audience Segment Report※を活用する)
【POINT】
① リターゲティングのみの利用では他DSPを実施するのと変わらない(むしろCPCが高い分、不利)。
Amazon AAPの良さを出すのであればライフスタイルやホットカスタマー等のオーディエンス配信の活用がおすすめ。
② オーディエンス配信をどのように行うかは「Audience Segment Overlap Report」を活用して決める。
※Audience Segment Overlap Reportとは?
自社サイトにタグを埋めるだけで、以下のような仕組みで自社サイトに訪問しているユーザがAmazonにおいてどのカテゴリのオーディエンスなのかを出稿前に知ることができる仕組みです。
※利用には、条件があります。
※自社サイトのUU数が少ない場合には、分析ができないケースがあります。
③ ②の情報を元にオーディエンスを決めて配信し、Audience Segment Reportを確認して、次回の配信につなげる。
※Audience Segment Reportとは?
Amazonの広告配信レポートでは自社が選択した配信セグメントの配信結果だけではなく、他カテゴリのユーザの反応も合わせてみることができます。(標準サービス)
例)自動車メーカー様で「自動車関連部品」「ゴルフ製品」興味のオーディエンスに配信した場合のサンプルレポート
※この例では新たに「男性化粧品」「タブレットアクセサリー」に興味のあるユーザも反応が高いことが分かるので、次回配信時に配信に加えるようなことも可能です。
運用型広告2(Amazon AMS、ベンダー広告)
■役割
・Amazonモール出店者向けの「モール売上最大化」
■特長
- 配信面はAmazonサイト内のみ
- Amazon出店者(ベンダー登録・セラー登録どちらでも)のみ利用可能 ※参考URL:http://unyoo.jp/2018/02/amazon-marketing-service-vol1/
- リンク先はAmazon内のみ(外部サイトへのリンクNG)
- ターゲティング方法は「キーワード」「行動履歴」「商品」
■AMS掲載場所一覧(広告種別ごとに選択可能)
■ターゲティング方法
1. キーワード:Amazonで検索された際に連動して検索結果に表示する。
【POINT】自社の商品名はもちろん、競合他社の商品名もキーワードで購入可能2.行動履歴(興味・関心)
【POINT】サブカテゴリでもキーワードに比べて多くの配信量を確保できることが多い。キーワードとの併用も有効。3.商品 a-sinと呼ばれる商品番号をベースにその商品詳細を閲覧しているユーザに広告を掲載
■推奨の配信方法(売上最大化が目的の場合)
スポンサープロダクト広告>ヘッドライン広告>商品ディスプレイ広告
AMS・ベンダ広告はしっかりと運用すればROAS1,000%(※メディックス実績)を超える結果も出せるメニューです。
非常に効率が良い反面、広告impを確保するのが難しく、売上の最大化を目指すにはこのメニューでいかに広告imp・クリックを確保できるかが重要です。キーワードにもよりますが、スポンサープロダクト広告が掲載面的にも多くの広告impを出すことができます。ほかメニューのみの実施では広告impがあまり確保できないため、メインでスポンサープロダクト広告を活用し、オプションとしてほかのメニューを組み合わせる形がおすすめです。
【POINT】
① 初期設定では競合商品名も含めて、効率の良いキーワードをしっかりと「手動で」設定する(自動設定も可能ですが、初期は非推奨)
② サブのKPIとして「商品詳細ページへの来訪数(単価)」を設定することがおすすめ
※Amazon内でのレコメンドロジックを活用する。詳細は下図を参照
Amazonの優秀なレコメンドロジックを活用してみましょう。レコメンドロジックが発動する「商品詳細ページへの来訪」をKPIとすることにより、広告の実施を停止した後もAmazonの仕組みが自社プロダクトの売上UPに貢献します。
まとめ
Amazon広告は、それぞれの広告手法・メニューに特長と役割があるため、目標に合わせて、もしくは併用しての掲載が効果的です。
例)Amazonモール内での売上最大化の場合
※純広告で商品認知を高め、AAPにて商品詳細ページへの誘導を強め、啓蒙し、AMSにて最終購買へ導く方法
・配信ターゲティングの活用役割
Amazon広告は、上記を組み合わせて活用することにより、新規のユーザへの告知~購入、リピーターの獲得までフルファネルでユーザにアプローチしていくことが可能です。今後も影響力を増していくと考えられるAmazon広告は、ECを実施されている方であれば必須で活用していくべきものになるでしょう。ぜひ、ご検討ください。