BtoB企業にとって、導入事例は重要なマーケティングツールの1つです。しかし、顧客の購入意欲を高め、導入決定を後押しする事例と、そうではない事例の2つが見受けられます。今回は、導入事例の制作をスムーズに進める手順から、顧客が本当に必要としている情報の提供で“売り”につながるBtoB導入事例作りのポイントについて解説します。
目次
顧客はここを知りたい ! 導入事例に求められる情報とは ?
弊社のお客様を対象に行った調査では、IT企業のWebサイト内の導入事例ページへのアクセス数は第3位。また、IT製品・サービス選定者へのアンケート調査では、興味あるコンテンツが「製品特長」「価格」「仕様」と同様に約6割の人が「導入事例」と回答しています。顧客は導入事例に多くの関心を寄せていると言えるでしょう。また、業績の良い企業は導入事例の紹介数が多い傾向にあり、『売れる⇒導入事例が増える⇒さらに売れる』という好循環が生み出されています。
製品・サービスの検討を進める顧客は、自社のニーズに合っているかどうかを判断するための事実を求めています。導入事例はそんな顧客の視点にぴったりのコンテンツです。実際に製品・サービスを導入した企業の生の言葉で機能や効果が語られるため、カタログなどよりも客観的で信頼性の高い情報として受け入れやすいからです。
“売り”につながる導入事例は、目的に合った企業選びで決まる
事例制作の第一歩は、登場してもらえる企業探しです。導入事例の数を増やす目的であれば、より多くの取引先企業に声をかける方法でも良いでしょう。しかし、企業選定で重視したいのは、その導入事例の利用目的を明確にした上で、候補企業を選ぶことです。
製品やサービスの信頼性を高めたいなら、知名度の高い企業に絞るべきです。また、製品の課題解決力の高さをアピールしたいのなら、候補企業が導入前に抱えていた課題を検討し、企業を選ぶべきです。課題の解決力や導入の速さ、運用の容易さ、使い勝手の良さなど、その事例を通して、ターゲットとなる顧客に何を伝えたいのかを明確にした上で、事例企業を絞り込めば、狙い通りの反応が得られる導入事例が作成できます。
また、導入事例を企業規模や業種別に複数バリエーションを用意できるのであれば、『うちと同じような規模・業種で効果が出ているのなら、検討してみよう』と購入意欲を更に高めることができます。
ここで、導入事例の取材に協力してくれる企業を確保するうまい方法を紹介します。1つは、導入検討の段階から事例を依頼しておく方法です。商談中、値下げする条件の1つに事例への登場を加えておけば、承諾が得やすいようです。また、事例企業にとっても、自社の業務やサービス改善に積極的に取り組んでいることがアピールできるメリットも伝えるべきです。さらに、販社に対し、事例企業を見つければインセンティブを出すといったキャンペーンを実施し、導入事例の数を増やす方法を行っている企業もあります。
“売り”につながる事例作りのスムーズな進行は事前の“根回し”から
事例企業が決まったら、取材、ライティング、事例企業での確認といった流れで導入事例の制作が進行します。そして、スムーズに進行するかどうかは、各プロセスでの事前準備や根回しにかかっています。事例企業が導入事例原稿の意図や導入事例の目的を理解しないまま、制作を進めると、予想外に多くの時間や手間がかかり、導入効果などを充分に伝えきれない内容になる恐れがあるからです。では、事例企業が決定後、押さえておきたいポイント別の事前準備や根回しを解説します。
(1)事例企業への根回し
事例への協力を依頼する際、下の件を必ず伝えましょう
●自社の製品・サービスの販促を目的とした導入事例である
●印刷物や自社サイトへの掲載など、導入事例の利用方法
●取材対象者の顔写真を撮影し、氏名・プロフィールと共に事例に掲載する
●社名ロゴ、社屋や実際の業務現場の撮影写真を掲載する(※事例原稿の構成による)
(2)事例企業への確認事項
●取材対象者と顔写真付きで事例原稿に登場する人の人数確認(※話者全員が顔写真付きで原稿に登場するとは限りません)
●撮影を含めた取材時間90分~120分の間、撮影に適した取材場所の確保依頼
●取材対象者以外に広報や法務など、原稿をチェックする部門の有無
●最初の原稿の提出から戻しまでの日数・回数
(3)事前準備(原稿の構成検討)
●ライターに事例の概要(課題や選定時の要件、効果など)を簡単に説明
●今回の事例で自社がアピールしたいポイントなどを詰める
●これらを元にライターがヒアリングシートを作成し、導入企業へ事前に提出
(4)取材時の根回し
●取材開始時、取材の趣旨を改めて説明、撮影とICレコーダーによる録音を行うことを伝える
●取材時、導入で工数○%削減などの数字が不明確な場合は、調べていただくことを依頼する
導入事例に必要な要素だけでなく、効果的に見せるデザインも検討すべし
多くのBtoB導入事例は下の要素で構成されています。しかし、これらはあくまでも必要最低限の要素。導入事例の目的やターゲット、今後作成される事例原稿を考慮した上で、プラスしたほうが良い情報ポイントがあり、効果的なデザインがあります。
たとえば、導入事例を企業規模(従業員数)や業種別に分類し、使い分けるのであれば、企業規模・業種を分かりやすい場所に配置するデザインにすべきでしょう。また、『導入前の課題→選定要件と決定ポイント→導入効果』が、事例原稿をじっくり読み込まなくても、ひと目で分かるようコンパクトに載せるデザインも読み手にとっては非常に分かりやすい構成です。
(1)事例企業の情報
●企業情報:定型的な正式社名や設立、業務内容などから、最近の活動トピックスなど
●取材対象者:氏名・所属部署・役職・役割など
(2)導入前の課題
導入以前に抱えていた課題を詳しく、具体的な現象まで
(3)選定ポイント
システム要件、提示したRFPなど
(4)候補に挙がった他社の製品名
※掲載するかどうかは適宜対応
(5)決定ポイント
(4)から導入決定に至ったポイント(機能、特長、コスト、対応など)
(6)導入決定から本番稼働までのプロセス
期間、苦労したこと、問題発生から解決まで(※より具体的な内容)
(7)導入効果や製品・サービスの評価
導入によって改善・向上された内容(○%の工数削減など、数字も交え)
(8)今後の展開
今後、その製品・サービスをどう活用していくか(※他部門への展開、機能拡張など)
(9)製品・サービス提供会社への感想や今後の期待
まとめ
導入事例は、導入前の課題と導入後の解決について事例企業に語ってもらえればOKとお思いの人が多いでしょう。しかし、その導入事例を読んだ人が何もプラス情報を得られない“感想文”のような内容になっているケースも数多くみられます。企業が導入を決定する際の重要な判断材料になっている以上、事例企業任せにしていてはもったいない。次の導入企業となるターゲットの課題が解決されることを、信憑性をもって伝えられる内容になっているか ? ターゲットの視点で読むことをお薦めします。
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