BtoB向けのリスティング広告はどのように実施し、運用をしていけば良いのか分からない方も多いことでしょう。BtoBリスティング広告は、BtoCリスティング広告に比べ、クリック数が少なくコンバージョンに至りにくい特徴があります。通常のリスティング広告はコンバージョンをKPIとして運用を行います。しかし、BtoBリスティング広告はコンバージョンだけでは効果の判断が難しいため、クリックもKPIとして運用し、クリックの質を測ることが重要です。
そこで今回は、BtoBリスティング広告を効率的に運用するために知っておかなければいけないポイントをご紹介します。
目次
BtoBリスティング広告における1クリックの重要性
BtoBリスティング広告の場合、1クリックの重みがBtoCより大きいと考えることができます。
クリックが少ない(希少である)から重みがあるとも言えますが、別な見方をすると、その1クリックには数十、数万人の社員分のクリックが隠れていると考えられるからです。
例えば、パソコンを購入するところをイメージしてください。
検索ユーザーが個人であれば、1クリックで1台のパソコンが売れることになりますが、企業の情報システム担当者であれば、1クリックで数十~数万台のパソコンが売れることに繋がります。
「どうせ、BtoBはクリックが少ないから…」ではなく、「BtoBだからこそ、少ないクリックを大事に扱う」ことが重要なのです。
また、「製品・サービスの検討期間が長いこと」、「販売代理店などが介在し、必ずしもWEB上でアクションしないこと」が、正確なコンバージョン計測を困難にしています。
コンバージョン件数が正確に測れない現状を踏まえると、
クリックの質を測り、少ないクリックでも良し悪しの判断が下せるよう、運用に繋げることがBtoBリスティング広告の最適解と考えます。
解析ツールの導入と事例紹介
クリックの質を見究めるには、解析ツールと組み合わせる必要があり、その見方はいくつかあります。
これからクリックの質を見究めて効果改善・効率化に繋がった3つの事例を紹介します。
事例①直帰と滞在のデータを分析して改善に繋がったA社の事例
A社は通常のリスティング広告の運用では測れない、クリックとコンバージョンの間に独自の中間指標を設けて運用を行いCVRの改善に繋がりました。
独自の中間指標とは“10秒未満滞在直帰”、“30秒以上滞在直帰”というデータです。
この中間指標により、直帰ユーザーの質の見究めが可能となります。これは、直帰率が高い1枚モノのランディングページの場合に特に有効です。
加えて、フォーム到達などコンバージョンの一歩手前をLight なコンバージョンとして測ることで、より質の高いクリックの分析が可能になります。
下の表が実際に10秒未満、30秒以上の滞在直帰率のデータを参考に運用した事例になります。
【レポートからの考察】
直帰率が高く、10秒未満直帰率も高く、30秒以上滞在率が低い状況です。
Light コンバージョン(フォーム到達)はしているものの、コンバージョンに至っていません。
【仮説】
殆どのユーザーはページを読んでおらず、ニーズのあるユーザーもフォームで離脱している可能性が高いです。
この仮説からリンク先ページに何らかの課題があることが分かります。
そしてリンク先ページの分析を進めると次のような事柄が分かりました。
【リスティング広告のリンク先ページからの考察】
A社は「コスト削減」をメインにした訴求ですが、競合他社と比較すると他社は「シェアNo.1」をメインに訴求しており、且つコスト訴求も行っているため訴求内容で負けている可能性があります。
【リスティング広告のリンク先ページからの仮説】
掲載状況から、まず1位である競合他社のサイトを閲覧したあと、A社サイトに訪問したと考えらます。
競合は「シェアNo.1」のほかに、コスト訴求も行っているため、A社の製品はユーザーの印象に強く残らなかったと想定されます。
【改善策】
・リンク先のファーストビュー部分に「シェアNo.1」の要素を目立たせて、対抗する。
・広告文を社名訴求から他社が訴求していない「初期費用0円」訴求に変更。
データ分析より、リンク先の内容変更後、CVRが約1.5%改善されました。
このようにクリックが少ない中でも、クリックの質を見究めることにより改善に繋げることができます。
この事例は中間指標を細かく設定した運用になりますが、簡単にクリックの質を見究める方法もあります。
次は直帰のデータに着目した運用事例になります。
事例② 直帰をしなかった(非直帰)ユーザーを伸ばし獲得数増加に繋がったB社の事例
これは製品の「WEB全体の無料お試し申込数」が「ディスプレイ広告の訪問数とその非直帰数」との相関性が高く、ディスプレイ広告での質の高いクリック=「非直帰数」を増加させることで「WEB全体の無料お試し申込数」が間接的に増えた事例になります。
その相関関係を表したものが下記グラフになります。
上のグラフより、ディスプレイ広告の訪問とその非直帰数が増えるにつれ、WEB全体の無料お試し数も伸びていることが分かります。この相関性からディスプレイ広告の非直帰数(=質の高いクリック)を伸ばすことで、間接的に無料お試し数に繋がると想定して、非直帰数を伸ばす運用を行いました。
その運用結果である「非直帰数×WEB全体の無料お試し数」の推移が下になります。
上のグラフより、クリックの質の高い非直帰数を伸ばすことで、WEB全体の無料お試し数の増加につなげることができました。(消化コストは前後3ヶ月でほぼ同額)
このように非直帰数を伸ばす(直帰率を下げる)という基本的な運用方法でも、解析ツールでクリックの質を測るポイントを分析することによって改善に繋げることができます。
最後にマイクロコンバージョンを使ってのクリックの質を計測する方法です。
事例③マイクロコンバージョンによりビッグキーワードの効率化を図ったC社
マイクロコンバージョンとは、最終コンバージョンまでに発生したアクションを仮のコンバージョンとして計測する運用になります。この事例では、サイト内にあるボタンのクリックを計測できるようにして、その数値をマイクロコンバージョンとしました。
この案件ではコンバージョンが少ないことに加えて、主にWEBサイトに集客しているキーワードはビッグキーワードでした。そしてこれらはCPCが高いという状況でもありました。このような状況のアカウントでは、ビッグキーワードはコンバージョンにあまりつながらず、コストばかり使ってしまうキーワードとみなされ停止するという判断に至る可能性が高いです。
しかし、マイクロコンバージョンを用いて運用することで、キーワードのボタンクリックの状況がわかるため、ビッグキーワードごとで検索ユーザーのモチベーションが可視化でき、運用の判断をすることができます。
検索ユーザーに潜在層や顕在層が含まれるビッグキーワードでも、ミドルキーワードと同様なクリックの質を秘めていることが分かります。コンバージョンが無く効果が判断できないような場合でも、マイクロコンバージョンを利用すれば無効だと思われていたキーワードも有効なキーワードとして判断できます。
実際にビッグキーワードの運用効率化を図っていき改善を図ったデータが下になります。
この運用を行うことで効率化を図ることが可能になり、むやみにキーワード停止することがなくなるので、指名キーワードなど効果が良いキーワードだけが残り先細ってしまうという状況も避けることができます。
以上、紹介した3つの事例によりクリックやコンバージョンが少ないBtoBリスティング広告でも、クリックの質を測ることで効果的な運用が実現できるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
まとめ
リスティング広告において解析ツールはBtoC、BtoBに関係なく導入することが必須といっても過言ではありません。特にBtoBに関しては冒頭で記した特徴があるため重要になってきます。
ただ解析ツールを導入すれば、すぐに効果改善へと繋がるかと言えばそうではありません。
効果改善に繋げるためにはデータ分析を行い、仮説を立て、施策を実行し、結果を検証して判断するという至極当たり前のことを継続することが重要となります。
この運用サイクルを続けることでクリックの質は何で見究めるか、また質を上げるためにサイトに修正は必要かなどリスティング広告以外のことに目を向けるのも重要になってきます。
これからリスティング広告を運用する方、すでに運用されている方もコンバージョンだけに縛られずに、今までと違った角度で分析を行うことで効果改善へとつながる方法が見えてくると思います。
ウェブ部を運営するMEIDXでは、BtoBに特化したマーケティングサービスを提供しております。
リスティング広告でお悩みの方は、一度ご相談下さい。