Webマーケターの皆さんが日々の活動の中で、何となく感じていることや気になっていることを、20万人ものモニタの行動ログからひも解くインターネット市場調査定期レポート。
第5回の今回は、「キュレーションメディア」についてです。
キュレーションメディアの中でもどんなサイトが多くのユーザを集めているのか、メディアごとのスマホ比率の高さなどを紹介します。
■分析概要
全国の20万人規模のモニタ会員の協力により、ネット行動ログとユーザ属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用し、PC、スマートフォンともに2016年1月月間訪問者数が10万人以上のサイトを対象に調査。
PC:2015年2月~7月と2015年8月~2016年1月を比較して伸び率が高い上位10サイト
スマートフォン:2015年6月~9月と2015年10月~2016年1月を比較して伸び率が高い上位10サイト(ただし、スマートフォンアプリは対象外)
※サイト訪問者数はPC、スマートフォンからの各Webサイトへのアクセスを集計し、ヴァリューズ保有モニタでの出現率を基に、国内ネット人口に則して統計的に推測
※集計対象月は2016年1月(ただし、訪問者推移はPC:2015年1月~2016年1月、スマートフォン:2015年8月~2016年1月)
■結果
◆PC、スマートフォンともに「Marble」が躍進
◆スマートフォンは女性比率と20代比率が高い
◆他のサイトにない「Middle Edge」の【あの頃ナウ】機能が滞在時間に影響
となりました。
調査対象サイトはすべて、以前よりもユーザ数を伸ばしているところに限定しておりましたが、それらの中でも伸び率には大きな差があり、さらにPCユーザだけが突出して伸びているサイトやスマートフォン経由のユーザを上手に取り込んでいるサイトなど、特色も出ています。
■考察サマリ
◆PC、スマートフォンともに「Marble」が躍進。
キュレーションメディアが続々と登場している中、特に注目されているサイトはどこでしょうか。PCサイトでは旅行キュレーションメディアの「RETRIP」が2015年1月時点の訪問者数と比較すると10倍、「TravelBook」は20倍にまで成長していることがわかります。
国内外の人気スポットやランチ、スイーツなどのグルメ系コンテンツが人気のようです。
また、2015年1月時点でアクセスがなかった女性向けまとめサイト「Marble」が2015年4月頃から少しずつアクセス数を伸ばしており、2016年1月時点では「RETRIP」に迫る勢いにまで急伸しています(図①)。
スマートフォンでも「Marble」は急伸しており(図②)、注目すべきキュレーションメディアになっています。
また、各サイトのPCとスマートフォンユーザの比率も見てみました。全体的にスマートフォン経由のユーザが多いようで、キュレーションメディアはスマートフォンで、より閲覧されていることがわかります。
2016年1月のデータでPCとスマートフォンの訪問者数を比較すると、スマートフォン経由のユーザがPC経由ユーザの倍以上となっているサイトもいくつかあり、スマートフォンユーザをうまく取り込めているサイトが全体としても上位に来ている傾向があります。(図③)。
◆スマートフォンは女性比率と20代比率が高い
次に、サイトごとにPCとスマートフォンでユーザ属性を比較してみました。性別を見てみると、スマートフォンでは女性比率が高く、キュレーションメディアを閲覧するのにスマートフォンをよく利用していることが考えられます。また、車に特化した「Carcast」(PC)や、ゲームに特化した「GAMY」(スマートフォン)は男性比率が非常に高いことから、男性の嗜好性が読み取れます(図④)。
続いて年代別で見てみると、PCはどの年代のシェアもほぼ均等なのに対してスマートフォンは20代のシェアが高く、若い世代ほどキュレーションメディアを閲覧するデバイスはスマートフォンがメインと言えそうです(図⑤)。
◆他のサイトにない「MiddleEdge」の【あの頃ナウ】機能が滞在時間に影響
続いて平均滞在時間で見てみると、PCは記憶をくすぐる大人のWebメディア「MiddleEdge」が他サイトと圧倒的な差をつけています。
「MiddleEdge」には他のサイトにない【あの頃ナウ】という機能(自分の年齢にあわせて、その年代の記事が検索できる)があり、この機能が滞在時間を増やしている可能性が高そうです。
また、スマートフォンはどのサイトも平均滞在時間が1分以上とPCと比較すると長めであることが特長的でした。
調査をしたすべてのサイトでスマートフォンサイトのほうが滞在時間が長く、スマートフォンで情報閲覧しているユーザは、よりじっくりと記事を読んだり、ページ遷移などのアクションをしてくれている可能性が高そうです。
◆「Marble」の併用率が人気を示す結果に
最後に、各サイトを閲覧しているユーザが他のキュレーションメディアをどの程度閲覧しているかを示す【併用状況】を見てみました(※軸となるサイトを100%として、他のキュレーションメディアとの閲覧併用状況を集計)。PCでの閲覧ユーザは「RETRIP」を併用している割合が高いことがわかります。
また、「Marble」も比較的併用されやすいサイトであることが伺えます。
特にマネーやビジネス情報を扱う「Monkey」を閲覧しているユーザは「RETRIP」の併用率が47%と約半数いることから、親和性が高いことが考えられます。
スマートフォンの閲覧ユーザで見てみると「Marble」と、欲しいモノや体験について調べるサイト「KAUMO」がよく併用して閲覧されており、「Marble」はPCと同様にスマートフォンでも人気があることが伺えます。
また、美しくなりたい女子向けサイト「美人部」を閲覧しているユーザは「Marble」(併用率39%)以外にも「KAUMO」(併用率48%)も併用して閲覧しており、特に【20代女性】は他の年代と比較すると3つのサイトの併用率が高くなっており、特定のファンを取り込めていることが読み取れます(図⑥)。
◆急成長するキュレーションサイトを広告で活用する
このようなキュレーションサイトは、多くが無料で記事を読むことができる形式が支持されています。運営側はこの形式を維持するために、サイトに「広告」を入れることにより収益を得て、それを宣伝費として活用し、さらにユーザを増やしていくというサイクルで回しています。
前述の「Marble」(女性)や「GAMY」(男性)、「Middle Edge」(40代)、「Carcast」(車)、「Monkey」(お金)など、キュレーションサイトには属性や趣味趣向が明確なものが多く、広告の出稿を検討している企業にとって、分かり易く魅力的なメディアとして注目を集めています。
ここではそのようなキュレーションサイトの「広告」についても簡単に紹介いたします。
■ネイティブ広告(タイアップ広告)
そのキュレーションサイトの記事を読みにきているユーザに対して、ほかの記事と同じようなテイストでタイアップ記事を掲載することにより、ユーザの自社サービスに対しての認知を深める効果の高い広告形態。
編集部が記事を書くことにより、サイトに来るユーザに伝わりやすい形で自社サービスを伝えていくことができます。
人気のサイトでは、提供クレジットをしっかり入れて、ステマ(ステルスマーケティング)問題にも配慮してサービス提供されています。
■インフィード広告
キュレーションサイトの記事では、画像+テキストの形でリスト化されて選択しやすいような形式で提供されているものがほとんどですが、それと同じ形式で記事と記事の間に掲載される「インフィード型」と呼ばれる広告形式が人気です。
この形式で掲載することにより、普段は広告に対して興味のないユーザに対しても自然な形で訴求することができ、自社にとって新規のユーザを自社サイトに誘導できることがメリットの広告です。
広告がクリックされる率も、通常のバナー広告に比べると高く、サイト誘導単価が安いことも人気の理由です。
キュレーションメディアは新たな情報収集の形として、一般的になりつつあります。急成長するキュレーションメディアをどのように活用するかは今後、企業のマーケターにとって重要な要素となると感じています。
国内最大規模のネット行動リサーチモニター数を保有する「VALUES eMark+」では、自社と他社を比較しながらアクセス状況を分析できます。サイト訪問者数やユーザ属性などをすぐにチェックしたい時に便利な無料版ASPサービスもあります。