ECの収益をあげていく上で、効果的なターゲティングは収益増に直結するため、非常に重要であると認識している方も多いかと思います。
この記事では、より効果的なターゲティングのヒントとなる分析手法「クラスター分析」について、基本をわかりやすく解説します。
クラスター分析の説明では、難しい数式や専門用語のものが多いですが、可能な限り簡単に解説しますので、自社で運営するECサイトのターゲティングをする際の参考にしていただければと思います。
目次
そもそもクラスター分析とは?
クラスター(cluster)とは、英語で「集団」や「群れ」を意味する単語で、クラスター分析とは、異なる性質のものが混在した分析データの中から、互いに似たものを集めてグループを作り、分類する分析手法です。
分類する方法には多くの手法があるので、ここでは詳細な説明は割愛しますが、簡単にいうと、あらかじめ分類基準が決まっていないデータに対し、互いにデータが似ている、似ていないを判別して似たものどうしをグループ化して分析する手法です。
そのためデータを単純に男女や地域、年代でグループ化してもクラスター分析とは呼びません。
クラスター分析はどんな課題を解決できるの?
クラスター分析によって、自社の商品を販売する際、「どのセグメントがターゲットとして適切か?」に対する答えを出すことができます。
主にCRMやプロモーションでのOne to OneマーケティングによってCVRを最大化するために、最もよく使われる分析手法の1つです。
ECではマーケティング手法として「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」という概念が浸透しています。
市場においての自社顧客をグループ化(セグメンテーション)し、自社が狙う顧客にアプローチ(ターゲティング)して、競合他社に比べ有利な立ち位置を確立する(ポジショニング)という考え方です。
しかし、ここでいうセグメンテーションはデモグラフィックデータ(性別や年代、職業や趣味嗜好など)であったり、サイコグラフィックデータ(購入履歴)など、すでにある情報を活用して分類することが多く、どうしても画一的なアプローチになるため、従来のセグメンテーションによるマーケティングは限界を迎えていると言えます。
そこで、より効果的なターゲットアプローチ手法として注目されているのが、異なる性質のものが混在したビッグデータを用いて、従来はできなかったグループ化によってCVRを最大化できるクラスター分析です。
クラスター分析ってどうやってやるの?
クラスター分析は、手法や指定するパラメータの種類が多く、決まったクラスターの定義や正解はありません。
そのため、とても難しく感じられますが、分析手法は大きく分けると2種類になります。
①階層クラスター分析
すべてのデータ間の類似度(または非類似度)を計算した後、距離が短い似たもの同士を併合していく方法です。
(距離とは、高校の代数や幾何学の授業で教わる「2点間の距離・ユークリッド平方距離」です)
最も似ている組み合わせから順番にクラスターにしていくので、途中過程を階層のように表した樹形図ができます。
②非階層クラスター分析
非階層クラスター分析は、階層クラスター分析とは異なり、階層構造を持たず、あらかじめいくつのクラスターに分けるかを決定し、決めた数のクラスターにサンプルを分割する方法です。
サンプル数が大きいビッグデータを分析するときに適しています。
出典:朝野煕彦著「入門 多変量解析の実際」
クラスター分析の活用方法
クラスター分析は主に下記のようなCRMやプロモーションでのOne to Oneマーケティングに活用されることが多いです。
いずれもデータをもとに、このクラスターはこういった顧客だという仮説を立てたうえでの実行が必須となります。
①同じ商品のセールでも、紹介するキャッチコピーや配信するメール原稿を変えて集客を最大化させる。
②同じ商品のセールでも、ページ上の訴求ポイントを変えることでCVRを最大化させる。
③クラスター(顧客グループ)によって、紹介する商品を変えてCVRを最大化させる。
④クラスター(顧客グループ)によって、配信するキャンペーンを変えCVRを最大化させる。
⑤行動データをもとにしたレコメンドに利用して、客単価を最大化させる。
まとめ
いくらクラスター分析で細かいターゲティングをしても、それが施策に結びつかなくては意味がありません。
そういう意味では最初にやりたいことありき、具体的な仮説ありきでクラスター分析を実施するのが、効果的なターゲティングと施策を見つけて、収益を向上させる近道といえます。
仮説を立てる際には、どういった目的で、どういった分析軸をみるか、それをもとに何をしたいのか、を明確にした上でクラスター分析を活用することが重要といえるでしょう。