ECサイトのリピート率を左右する5つの要素と7つの指標|ウェブ部

ECサイトのリピート率を左右する5つの要素と7つの指標

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Eコマースのリピート率というと、EC事業の責任者から現場担当者まで、業績を上げるために必ず意識している数字だと思います。
この記事では、リピート率を上げるためのCRM施策の考え方と検証の方法だけでなく、実際に高いリピート率を出すことに成功している企業が行っている具体的な施策例をいくつか紹介させていただきます。
扱う商材の特性や状況によってそのまま使える施策、使えない施策がありますが、まずは全体の概略を理解した上で、ご自身の事業に活用できるよう参考にしていただければと思います。

高いリピート率は、事業の成長速度を早める

高いリピート率は、初めて購入した新規顧客が繰り返し注文をすることで売上にプラスに働くと漠然と考えている方もいらっしゃると思いますが、高いリピート率を実現することのメリットをさらに掘り下げて考えてみましょう。

 リピート率が高いということは、同じ顧客が繰り返し同じショップで購入をする、つまり、それによってLTV(顧客生涯価値)が高くなるということを意味します。
※LTV(顧客生涯価値)とは新規顧客1人当たりが将来的に作り出す累計売上

では、LTVが高いとどんなメリットがあるのでしょうか。

 直接的なメリットとしては、売上に占めるリピーターの注文比率が増え、売上全体を底上げできるという点ですが、もう1つ重要なメリットがあります。それが、CPA(新規顧客1人あたりの獲得コスト)を高く設定できるということです。

 CPAを設定するにあたって、ROASやROIだけでなく、LTVも考慮することによってより高いCPAを設定できます。集客をする際に目標CPAを高く設定すると、同じ期間内での顧客獲得ボリュームを増えるだけでなく、集客の打ち手(出稿先や集客方法の選択肢)も増やすことができるので、CPA目標が低い場合に比べ集客の底打ちを回避し、顧客獲得の速度を早め、事業の成長速度を早めることも可能です。

これは、EC事業を行う上で、競合と比べ圧倒的な強みになります。

 競合より多くの顧客を獲得し、より早く成長して事業の規模を大きくすることによって、さらに投下する予算を増やし、成長速度を高めるという好循環を作り出し、加速度的に成長することができるからです。

このように、CRMによってリピート率を高めるということは、EC事業におけるいち業務というよりも、事業全体に影響を及ぼす大きな要素であると言えます。
※ROAS=広告投資に対する売上回収率
※ROI=広告投資に対する利益回収率

CRMによってリピート率を高めるために必ず見るべき7つの指標

リピート率というと、単純に「購入者がその後リピートした割合」と考えられますが、リピート状況を正しく把握し、今後の改善のために意味ある施策をたてる上で、見るべき必須の7要素についてまとめました。

要素1:初回購入時期

分析対象となる新規購入者の購入期間(初回購入月)を定義する必要があります。
扱う商材によっては初回購入月ごとにリピート率が全く異なりますので、
初回購入の時期を定義することは重要です。

要素2:商品もしくは商品カテゴリー

リピート率を分析するにあたって全体の数値だけではなく、初回注文の商品カテゴリー別や主要な商品別にリピート率を分析することも重要です。
全体のリピート率が高くても、特定の商品のリピート率が高く、その他の商品が低い結果、全体として現在の数値が出ているというのはよくあることです。
それは商品別や商品カテゴリー別のリピート率までを見ることで、今まで見えなかった課題が見え、課題を改善する新たな施策につなげることができるためです。

要素3:リピートの有無を追う期間

リピート率を出す際に、初回購入からどのぐらいの期間リピートの有無を追うかを予め定義する必要があります。季節性のある商材の場合、初回購入から12か月もしくは24か月まで見ていれば十分でしょう。その場合、もしもリピート判別の期間を過ぎてリピートした場合は新規として扱います。

要素4:リードタイム

顧客の注文ごとの間隔をリードタイムと呼びます。リードタイムが短いほど、顧客は短期間に何度も注文していることを意味するので、リピート率は高くなります。
リードタイムを把握することで、CRMを実施する際にリピートを促進させるのに適切なタイミングのシナリオ設計ができます。

要素5:累計注文回数別の残存率

累計の注文回数別にどのぐらいの顧客がリピートしているのかを把握することによって、どの注文タイミングに問題があり、CRMを強化すべきなのかが明確になり、問題となっているセグメントに適切なフォローを実施することができます。

要素6:リピート時の購入商品や商品ジャンル

初回注文で何を買った顧客が、リピート時に何を買っているか、を把握することでCRM実施の際に適切な顧客に、適切な商品を訴求し、効率よくリピート率を高めることができます。

要素7:LTV(生涯顧客価値)

冒頭でも触れたLTVはCRMの成果を評価する上でリピート率と並ぶ必須要素の一つです。
高いLTVは集客の際の高い目標CPAにつながり、新規集客方法の幅と獲得量を増やし、事業の成長スピードを早めることができます。

 以上の7要素をふまえた上で、リピート率を高めることを目的とした、具体的PDCAの回し方について説明します。

リピート率を効果的に高めるためのPDCAの回し方

CRMの効果を最大限に高め、リピート率の改善という成果を出すための、PDCAサイクルの回し方についてまとめました。

①現状のリピート率と関連数値を知る(現状分析)

CRMを実施するにあたって、まずは現状を知り、どの部分にどんな課題があり、どう改善していくか、具体的施策を立てるために、KPIの設計と現状分析を行うことが重要です。

01_ECサイトリピート

②過去の施策実施結果から仮説を立て、今後の具体的施策を決める(プラン)

過去のKPIの動きをみると、特定の月に特定の商品で伸びていたり、特定の商品を販売したり特定の施策を実施したタイミングで伸びているといった傾向が見えてきます。
その傾向をもとに仮説を立て、効率的にリピート率を高めるためのシナリオを設計し、具体的施策を立てていきます。

③ターゲットとメッセージを整理する(実行・検証)

かつての全配信メルマガ全盛期では、質はともかく見込客の数を集め、オファーを流し、購入後のユーザーに一斉配信したりステップメールを配信といった比較的単純なセグメント分けによるCRMがされていて、それでも十分なレスポンスを得ることができました。

 ところが、その手法があたりまえとなり効果が落ちてしまったことで注目されるようになり、現在でも広く行われているCRM手法がRFM分析です。
最終注文からの経過日数と累計利用回数と累計購入金額の3軸によって顧客をグループ分けし、最適な顧客グループに最適な内容を伝えることができます。

R(recency) 最終注文日時からの経過日数
F(frequency)累計利用回数
M(monetary) 累計購入金額

 もともとはメールよりも郵送コストの高いダイレクトメールを使ったCRMで、反応率の低い顧客へDMを送付することによる無駄なコストを防ぐために古くから使われていた手法です。
メールマーケティングで導入する場合には、効果を落とさずに日々の管理を簡素化するために、累計注文回数と最終注文日からの経過日数の2軸管理でPDCAサイクルの構築をスタートしてから、3軸の管理に移行していく場合が多く見られます。

また、これにより現状を知るだけでなく、過去に実施した施策がどれだけリピート率に影響しているかが見えてきますので、より高い精度の仮説を立てることができます。

02_ECサイトリピート

RFM分析での顧客セグメントの分け方は、ECサイトの商材や顧客層、過去のKPI値によって設計が異なりますが、特に重点的にCRMが必要となってくるセグメントは主に下の5つがあげられます。

●累計利用回数が多く、累計金額も多く、最近注文している最も優良な顧客
●累計利用回数は多いが累計金額が少ない、最近注文している顧客
→アップセルが必要な顧客
●累計利用回数・累計金額は多いが、最近注文していない顧客
→離反しつつある顧客。緊急の対応が必要
●累計利用回数が少なく、最近注文している顧客
→クロスセル・アップセルでこれから優良顧客へ育てるべき顧客
●累計利用回数も利用金額も少なく、最近注文していない顧客
→掘り起しの企画で動かないようなら、保有コストを鑑みて削除すべき顧客リスト

 RFM分析でリピート率は上がらないという意見も聞きますが、それはRFM分析が悪いのではなく、施策やオファー、伝え方(クリエイティブ)に問題がある場合が多いようです。

KPIの推移を定点観測し課題を見つけ改善策を立てる(課題の発見と改善)

商品別、時期別のリピート率やLTV、リードタイムなど、CRMの成果を評価するためのKPIを定点観測し、課題の発見と仮説立て、改善施策の実行といった一連のPDCAの流れを継続的に実施していくのですが、実際には前もって立てた仮説どおり施策が作用することは稀なので、課題となる部分を深堀して真の原因を探り、仮説と適切なアクションプランを作っていきます。

過去の事例から、リピート率を左右すると考えられる要素についてまとめました。
 【過去実例から見る、リピート率を左右する5大要素】

要素1:商材の特性(季節性/継続性)

商材の特性はリピート率に大きく影響します。扱っている商材が、繰り返し使われる消耗品なのか。一度買ったらその後は滅多に買い換えない、買いきり商品なのか。一度買った後に他の商品に波及する商品なのか。事業計画の段階で主要取扱い商品のロスセルやアップセルのしやすさなどの傾向を理解しておく必要があります。

要素2:初回購入者の質(流入元や、初回購入のきっかけ)

初回注文顧客をどのような集客元から、どのようなきっかけを提供して集客したか。という要素もリピート率に大きく影響します。
例えば、市場価格よりも大幅に価格の安いお試し商品で初回ユーザーを集めた場合と、初回からリピート顧客の客単価に近い商品を購入した顧客のリピート率を比較した場合、もちろん初回の獲得数に大きな差が出るだけでなく、リピート率にも大きな差が出てきます。
(初回の価格ハードルが低く、リピート時とのギャップが大きいほど、リピート率は低くなります)

要素3:外的要因(競合の状況/トレンド)

競合がどのような手法で、どのような商品やサービスをオファーし、どのぐらいの規模で展開しているか。という自社のECサイト外での要素もリピート率に影響します。
そのため、自社のCRM施策を立てる上で、競合の状況を常に把握しておくことは重要です。競合と同じジャンル、同じ訴求軸をもった商品で、同じターゲットの集客を行う場合、余程資本に自信がある場合を除き、消耗戦を避けるために競合と被らない集客手法を開拓したり、自社のUSPを活かす訴求を行ったり、差別化を図る必要があります。

要素4:初回購入商品の期待値と満足度

商品が届いた際に、お客様がページ情報を見て注文時に抱いていた期待値を上回る体験をしていただくことが重要です。そのため、ページの作り方や商品情報の伝え方で商品の魅力を最大限に伝えつつ買う気にさせる、期待値コントロールが重要になります。

要素5:初回購入後の接触頻度とその内容と理由(オファー)

注文した商品に満足しただけでは、その後のリピート率を最大限に高めるには不十分です。
お客様がリピートするのを待つ受け身の姿勢ではなく、適切なタイミングで適切な商品をプッシュで告知することが重要です。

CRMは戦略だけでなく実践する上でのディティールが要!

駆け足で概略をざっと紹介して参りましたが、「神はディティールに宿る」「リテール・イズ・ディテール」という言葉が示すとおり、CRMで重要なのは戦略だけではなく、戦術によって大きく成果が変わります。

 リピート率を向上させるためには、正しい戦略を理解した上で、キャッチコピーやクリエイティブ、オファー内容などのディティールに徹底的にこだわり、顧客にメッセージを伝えるためには、何をしたらどうなるというPDCAを地道に回していく継続と積み重ねのスタンスが重要です。

また、他のITビジネスと異なり、「Eコマースとはネットを通した客商売である」という本質を忘れてしまうと、理論や数字だけを見て顧客を見ないことになり、リピート率を向上させるチャンスを見逃すことになります。

理論や段取りばかりに時間をかけ過ぎず、常に動いている顧客の心理や状況と向き合い、最適なメッセージを、最適なターゲットに、最適なタイミングで伝え、検証と改善を続けることで、リピート率を最大限に高めることができるのです。

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