動的検索広告(DSA)は、広告運用の工数を大幅に削減しながら、より広範囲なキーワードをカバーし、検索語句と関連性の高い広告を配信できる機能です。
しかし、動的検索広告の設定方法や活用の仕方について、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、動的検索広告の概要やメリット、設定方法、そして効果的な活用のポイントについて、詳しく解説します。
目次
動的検索広告(DSA)とは?
動的検索広告(DSA:Dynamic Search Ads)は、Google広告が提供する、検索連動型広告の機能の1つです。※Yahoo!広告にも、動的検索連動型広告(DAS:Dynamic Ads for Search)という名称で、同様の機能がありますが、本記事では動的検索広告に統一して解説します。
通常の検索連動型広告では、広告を表示させたいキーワードを設定し、事前に広告見出しを作成しておく必要があります。
しかし、動的検索広告では、広告対象のサイトURLを登録すると、ユーザの検索語句と、対象サイトのコンテンツを照らし合わせ、関連性の高い検索語句に対して、自動で広告を生成してくれます。
その際、広告の遷移先となるランディングページも、対象サイト内から最適なページが自動で選定されるため、キーワードや遷移先URLの設定、広告見出しの作成が不要となります。
動的検索広告を活用することで、広告作成の手間が削減できるため、情報量の多いサイトや多種多様な商品・サービスを取り扱うサイトなどに、とても便利です。
参照:動的検索広告について(Google広告ヘルプ)
動的検索広告のターゲティングの仕組み
動的検索広告のターゲティングでは、キーワードは使用せず、指定したウェブサイトのコンテンツに基づいて、自動的に広告の表示対象となる検索語句が設定されます。
ターゲティングに使用するページは、個々のページや、特定のページグループ(URLに特定の文字列を含むページ)など、目的に合わせて指定が可能です。
また、除外動的広告ターゲットを使って、一部のページをブロックしたり、除外キーワードを追加して特定の検索語句で広告が表示されないようにしたりすることも可能です。例えば、ECサイトであれば「売り切れ」や「在庫切れ」などの語句を含むページなど、不要なページは除外することが推奨されています。
除外動的広告ターゲットについては、動的検索広告活用のポイントの章でも詳しく解説しています。
参照:動的検索広告のターゲットを作成する(Google広告ヘルプ)
参照:動的検索広告で除外設定を作成する(Google広告ヘルプ)
動的検索広告の広告見出しの仕組み
動的検索広告の広告見出しは、ユーザの検索語句と、指定したページやドメインとの間で、関連性の高いテキストに基づいて自動的に生成されます。
また、ページ・ドメイン・ウェブサイト・商品フィードを登録しておくと、Googleのウェブクロール技術によって、広告見出しに使用できるテキストが検出され、ページに関するより多くの検索語句を捉えることができるようになります。
広告見出しの自動生成において、ウェブサイト内のページのHTMLタイトル(<title>タグに設定される値)が適切に設定されていることは、非常に重要です。最適な見出しを生成するためには、クローラーがページの情報を、正確に読み取れるようにしておきましょう。
参照:動的検索広告について(Google広告ヘルプ)
レスポンシブ検索広告との違い
レスポンシブ検索広告は、検索連動型広告の広告タイプの1種であり、広告見出しと説明文を事前に複数パターン登録しておくことで、ユーザが検索した語句と関連性の高い組み合わせで自動的に広告を生成し、表示する機能です。動的検索広告とは違い、見出しや最終ページURLは手動で設定する必要があります。そのため、広告のコントロールがある程度可能となります。
関連記事:【2024年版】レスポンシブ検索広告(RSA)とは?メリットや入稿規定、拡張テキスト広告との違いを解説
動的検索広告とレスポンシブ検索広告では、自動化される範囲が異なるので、次の比較表を参考ください。
項目 | 動的検索広告 | レスポンシブ検索広告 |
広告見出し | 自動生成される | 設定が必要 |
説明文 | 設定が必要 | 設定が必要 |
最終ページURL | 自動生成される | 設定が必要 |
ターゲティング | 指定したWebサイトのコンテンツから自動的に決まる | キーワードの設定が必要 |
表示URL | 自動生成される | 自動生成される ※任意のパスを含めることは可能 |
適したサイト | 多くの商品やサービスを 取り扱うサイト (ECサイト、求人サイトなど) |
全般 |
動的検索広告のメリット
動的検索広告はその特長から、独自のメリットがあります。
ここでは、動的検索広告のメリットについて、詳しく解説します。
工数の削減ができる
動的検索広告は、広告運用にかかる工数を大幅に削減できます。
通常のテキスト広告やレスポンシブ検索広告では、キーワードの選定や広告見出し・説明文の作成を行う必要があり、そこにある程度の工数がかかってしまいます。
動的検索広告では、Webサイトの内容をもとに、広告見出しや最終URLが自動的に生成されるため、広告キャンペーンの作成にかかる時間と労力を大幅に削減できます。
特に、大規模なECサイトや頻繁に商品が更新されるサイトでは、広告文(見出しや説明文)の考案や、キーワード設定に膨大な工数が発生していました。動的検索広告を利用すれば、商品ごとに個別の広告を作成する必要がなくなり、目標達成のための分析や運用改善により多くの時間を充てることができます。
キーワードのカバー範囲が広がる
動的検索広告の導入により、広告のキーワードのカバー範囲が飛躍的に拡大します。
日々新しい検索語句が増え続ける現代において、人間による手動のキーワード設定でカバーできる範囲には限界があります。
動的検索広告は、手動選定では見逃しがちなキーワードでも、媒体のシステムが関連すると判断した場合に広告を表示することが可能です。そのため、より多くの検索語句に対応できるようになり、潜在的な顧客層へもアプローチできます。
検索語句と広告の関連性が高まる
動的検索広告では、ユーザが検索している内容と関連性が高いページに基づいて見出しが動的に生成されます。
広告見出しと最終ページURLが自動で最適化されることによって、ユーザのニーズに合った広告を表示でき、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)の向上が見込めます。
動的検索広告のデメリット
動的検索広告には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意すべき点や制限もあります。
ここでは、動的検索広告のデメリットについて、詳しく解説します。
入札単価を設定できない
動的検索広告は、キーワードごとに入札単価を細かく設定できません。検索連動広告は、あらかじめ登録したサイトの情報に基づいて、掲載するキーワードを自動的に選定します。
そのため、特定のキーワードに対して高い入札単価を設定したり、逆に低い入札単価に抑えたりといった細かい調整ができません。ただし、自動入札を導入している場合は、効果の高いキーワードに配信が自動で最適化されるため、人間が細かに入札単価を調整しなくともパフォーマンスの向上が見込めます。
意図しない検索語句に反応して広告を掲出してしまうことがある
動的検索広告では、広告を掲載する検索が自動で選択されるため、意図しない検索語句に対しても広告が配信される恐れがあります。
例えば、「最悪」「悪評」などのブランドイメージを損なう可能性のあるネガティブな検索語句や、ターゲット外のユーザにまで広告が表示されてしまうことがあります。そのため、動的検索広告を実施する前には、除外キーワードの設定が必要です。また、配信後も定期的に結果を確認し、不適切な検索語句に反応していないか確認しましょう。
遷移先が意図しないページになる可能性がある
動的検索広告では、検索語句にあわせて広告の遷移先も自動で設定されます。そのため、「会社概要」や「商品が売り切れているページ」など、コンバージョンから遠いページも表示されてしまう可能性があります。無駄なクリックを減らすためにも、表示させたくないページは、除外設定によって配信されないようにしましょう。
動的検索広告に向いているサイト
動的検索広告は、すべてのWebサイトに適しているわけではありません。特定の特長を持つサイトにおいて、より高い効果を発揮します。
ここでは、動的検索広告の設定に向いているサイトについて、詳しく解説します。
サイトのページ数や商品・サービス種類が多い
動的検索広告は、サイトのページ数や取り扱う商品・サービスの種類が多いWebサイトに適しています。
例えば、サイズや型番での検索需要のある商品を多数取り扱っている場合、それぞれに対して個別に広告設定を行うのは膨大な時間がかかります。
動的検索広告を利用することで、キーワードの取りこぼしを減らすことができ、効率的に広告運用を行うことが可能です。
具体的には、アパレルやコスメ、家電量販店などのECサイト、転職などの人材サイト、不動産や旅行など地名検索が多いサイトが該当します。
これらのサイトでは、動的検索広告を活用することで、潜在的な顧客層へのアプローチが期待できます。
SEOを意識したサイト作りができている
動的検索広告は、サイトの情報を正確に読み取り、広告を表示するため、SEOを意識して適切に構築されたサイトとの相性が非常に良いです。
ページ内で適切に設定されていると有効な内容としては、次が挙げられます。
- タイトルタグ:各ページの内容を適切に表現したタイトルタグが設定されている
- メタディスクリプション:ページの内容を簡潔に要約したメタディスクリプションが記述されている
- ヘッダタグ:適切な階層構造でヘッダタグ(H1、H2など)が使用されている
- コンテンツの質:各ページに十分な量の関連性の高い、質の良いコンテンツが存在する
これらの要素が適切に設定されていることで、動的検索広告はより正確にサイトの内容を理解し、関連性の高い検索語句に対して、適切な広告を表示できます。
結果として、クリック率とコンバージョン率を向上させることが可能です。
動的検索広告の設定方法
Google広告とYahoo!広告で、動的検索広告を設定する方法について詳しく解説します。
Google広告:動的検索広告の設定方法
Google広告での動的検索広告の設定方法は次のとおりです。
※動的検索広告を設定したいキャンペーンが作成済みの前提です
- キャンペーンページの「設定」タブをクリック
- 動的検索広告を設定したいキャンペーンを選択
- 「動的検索広告の設定」をクリック
- ウェブサイトのドメインを入力し、ウェブサイトの言語を選択
- 「保存」をクリック
設定完了後も、パフォーマンスを定期的に確認し、必要に応じて調整を行うことが重要です。
参照:動的検索広告を作成する(Google広告ヘルプ)
Yahoo!広告:動的検索広告の設定方法
Yahoo!広告での動的検索広告の設定方法は次のとおりです。
※動的検索広告を設定したいキャンペーンが作成済みの前提です
- 「動的検索連動型対象ページ」タブの「編集」ボタンをクリック
- 対象ページ編集画面で、動的検索広告を設定したいキャンペーンの広告グループを選択
- 「対象ページを指定する」「対象ページの条件を指定する」でそれぞれ、配信対象や除外対処のページの条件を選択(全ページ or 特定URL)
- 「追加」をクリック
参照:動的検索連動型広告の入稿の流れ(Yahoo!広告ヘルプ)
動的検索広告の効果確認方法
Google広告:動的検索広告の効果確認方法
- 管理画面の「キャンペーン」タブから、効果を確認したい動的検索広告を含むキャンペーン、または広告グループを選択
- 「分析情報とレポート」タブの「検索語句」をクリック
- 検索語句レポート内右上のプルダウンメニューから「動的検索広告の検索語句とランディング ページ」を選択
上のレポートで、実際の広告クリックにつながった検索語句や、検索語句から動的に選択された広告見出しと最終ページURL、それぞれのクリック数や表示回数などのパフォーマンスを確認できます。
参照:動的検索広告、広告ランク、掲載結果について(Google広告ヘルプ)
参照:動的検索広告の検索語句レポートについて(Google広告ヘルプ)
Yahoo!広告:動的検索広告の効果確認方法
Yahoo広告では、パフォーマンスレポートを作成することで、広告効果の確認ができます。動的検索連動型広告の広告効果を確認する際は、パフォーマンスレポートの「検索クエリー(動的検索連動型広告)」や「ページフィードターゲティングレポート」の作成が便利です。
- 検索クエリー(動的検索連動型広告)
動的検索連動型広告が配信された際の検索語句、生成された広告タイトル、最終リンク先URL別実績などを確認できます。
参照:検索クエリーレポート(動的検索連動型広告)(Yahoo!広告ヘルプ) - ページフィードターゲティングレポート
動的検索連動型広告が配信された際の情報を、対象ページ別に確認できます。
参照:動的検索連動型広告の配信実績の確認について(パフォーマンスレポート)(Yahoo!広告ヘルプ)
レポートの作成方法については、次のYahoo!広告公式ヘルプページをご確認ください。
パフォーマンスレポート・テンプレートの作成【検索広告】
動的検索広告活用のポイント
動的検索広告は、いくつかのポイントを押さえることで、性能を最大限に引き出し、広告効果を向上させられます。
サイトのSEO対応
動的検索広告に向いているサイトの章でも紹介しましたが、動的検索広告の効果を最大化するためには、サイトのSEO対応が非常に重要です。
検索連動広告は、サイト内の情報から、広告見出しと最終ページURLを決定するため、サイト内ページのタイトルタグやメタディスクリプション、ヘッダタグが適切に設定されているか、コンテンツの質と量は担保てきているか、などを確認しましょう。
これらの要素を最適化することで、動的検索広告は、より正確にサイトの内容を理解し、関連性の高い検索語句に対して適切な広告を表示できます。
除外動的広告ターゲットの設定
動的検索広告に、ドメイン、または特定のページグループでURLを指定している場合、配信対象としたくないページは除外設定をする必要があります。
ドメイン指定の場合は、サブドメイン違いも配信対象として含まれます。
例えば、ドメインが medix.co.jp” の場合、www.medix.co.jp と shopping.medix.co.jp はドメインが同じため、どちらも配信対象となります。Shoppingのみを対象とする場合は、www.medix.co.jpを除外する必要があります。ほかにも、会社概要ページや採用ページなど、直接的な商品やサービスの情報を含まないページは除外するようにしましょう。
また、サイト上に動線のないページでも、ページとして残っていれば配信される可能性があるので注意が必要です。除外設定は、キャンペーン、または広告グループレベルで行うことができます。
次に、Google広告の除外動的広告ターゲットの設定方法を説明します。
Google広告:除外動的広告ターゲットの設定方法
- 管理画面で「オーディエンス、キーワード、コンテンツ」タブを選択
- 「動的広告ターゲット」を選択
- 「除外動的広告ターゲット」を選択
- 除外対象とするWebページのルールを設定するか、ページのURLを登録する
参照:動的検索広告で除外設定を作成する(Googleヘルプ)
Yahoo広告は、動的検索広告の配信ぺージ設定と除外ぺ-ジ設定が1つの画面でできるため、手順はYahoo広告:動的検索広告の設定方法を参考にしてください。
キーワードの除外設定
動的検索広告の効果を最大化するためには、広告を表示させたくないキーワードの除外設定も必要です。定期的にレポートを確認し、どの検索語句が広告表示につながっているのかを把握しましょう。
除外キーワードを適切に設定することで、無駄なコストを削減し、より質の高いトラフィックを獲得できます。
除外を検討するべき検索語句は次のとおりです。
- ブランドイメージを損なう可能性のある語句
- 競合他社の名前や商品名
- 「無料」「格安」など、ビジネスモデルに合わない語句
- 明らかに意図の異なる検索語句
また、広告の関連性が向上することで、クリック率やコンバージョン率の改善も期待できます。定期的に除外キーワードのリストを見直し、必要に応じて追加や削除を行い、動的検索広告の効果を継続的に最適化しましょう。
【事例】動的検索広告による広告効果の改善
メディックスでも、動的検索広告の活用でインプレッション数やクリック数の増加が見られ、通常の検索連動型広告ではリーチできないユーザへの配信を拡大できていることが分かっています。
また、1クリック当たりの単価(CPC)も安価で抑えられ、顧客獲得単価(CPA)も通常の検索連動型広告よりも安価になる傾向が見られます。
フィットネス業界での動的検索広告の配信実績を紹介します。
▼社内での配信実績比較(通常の検索連動型広告 VS 動的検索広告)
業界:スポーツ・フィットネス
コンバージョン:予約
※集計期間22日間で、端数は切り上げています。
通常の検索広告に比べてインプレッション数も多く、1クリック当たりの単価(CPC)が抑えられています。
まとめ
動的検索広告(DSA)は、効率的かつ効果的な広告運用を可能にする強力なツールです。
動的検索広告の主なメリットは、工数の削減、キーワードのカバー範囲の拡大、広告の関連性向上、サイト更新への適応などが挙げられます。
効果的な活用のためには、サイトのSEO対応、除外動的広告ターゲットの設定、表示させたくないキーワードの除外設定などが有効です。
ぜひ、動的検索広告を上手く活用し、広告効果の最大化を目指しましょう。