DX(デジタルトランスフォーメーション)が流行し始めてから1年以上が経過していますが、いまや多くの企業が経営の見える化、業務の生産性向上、研究開発など様々な領域においてDXに取り組んでいます。さらに昨今では、マーケティング領域においてDXを進めていこうという取り組みが大手企業を中心に行われ、成功事例等の記事もメディアで見かけるようになりました。
この記事では、マーケティング領域におけるデジタルトランスフォーメーション「マーケティングDX」が何か、企業はマーケティングDX実現のために何をすべきなのかを詳しく解説します。
目次
マーケティングDXとは?~データを活用してさらに高いKPI目標・KGI目標を達成するためのチャレンジ~
元々、「デジタルマーケティング」という言葉があるように、マーケティング領域においては様々なところでデジタル化が進んでいました。例えば、
・Webサイト、SNS、動画等でのユーザアプローチ
・Web解析ツールや計測ツールでの行動解析
・インターネット広告での認知獲得、集客、顧客獲得
・上記をスムーズに行うため、精度を上げるための各種デジタルマーケティングツール
などです。
そのようなマーケティング領域において今さらデジタル化を推進する必要もないのに、なぜ『マーケティングDXを推進していきましょう!』と掲げる企業が増えているのでしょうか。
その理由は、デジタルマーケティングの様々な手法を最適化した結果、既に効果や効率は限界に来ていて、データを活用しさらに高いKPI目標・KGI目標を達成するためのチャレンジが必要になっているからだと考えられます。
また別の観点では、ユーザと接触するチャネルやデバイスが増え、従来のデジタルマーケティングツールや手法では正しくユーザにアプローチできなくなった、ということも影響しています。
そういった状況を打開するためのチャレンジが「マーケティングDX」です。そのチャレンジの中で最も優先度の高い取り組みの一つが、データを活用し個別最適ではなく全体最適ができる環境を構築し、ユーザに対して最適なマーケティング手法を行うことです。
マーケティングDXと「データ統合」
前章で述べた「個別最適ではなく全体最適を行うことができる環境」を構築するには、企業内で個別に管理されたWeb広告データ・Web行動データ・顧客データ・購買データなどを1か所に集約し、それぞれをつなげて見られる状態にすることが求められます。つまり「データ統合」です。
データを集約し統合する環境は、DWH(データウェアハウス)で構築するのが一般的です。様々なベンダーがDWHのツールを提供していますが、マーケティング領域で注目されているのは、GoogleCloudで提供される「BigQuery」です。
BigQueryはビッグデータを超高速で処理できるDWHですが、ウェブ解析ツールとして多くの企業に導入されているGoogle アナリティクスのデータをシームレスに連携できる特性から、マーケティング領域でのデータ統合環境として採用する企業が増えています。
また、次章以降で述べるダッシュボードやAIなどの機能をオールインワンで使えるCDP(カスタマーデータプラットフォーム)なども、大手企業を中心に導入が進んでいます。
マーケティングDXとデータの可視化「ダッシュボード」「顧客分析」
「データ統合」後は、統合したデータを可視化するためのダッシュボードを構築し、そこから導かれる顧客の傾向や目標KPI・KGIを達成するためのボトルネックとなる課題を抽出して分析をします。
ダッシュボードで見るレポート内容は様々ですが、
■目標KGI・KPIの進捗が確認できるレポート
■インターネット広告などのマーケティング施策がKGI・KPIにどれだけ貢献できているかを把握できるレポート
■顧客の状況やロイヤリティなどを確認できるレポート
などが多く見られているようです。
従来、ダッシュボードはエクセルなどの表計算ソフトで可視化することが一般的でしたが、BI(BusinessInteligence)ツールを導入することで、より高度で柔軟なレポートの構築を実現したり、また社内の複数の関係者へ一元的に共有することが可能になりました。Tableau、GoogleDataPortal、Domo、Lookerなどが良く使われています。
データ分析については、当サイトの下記の記事で詳しく解説しています。
精度の高いデータ分析を実現する「3つの基本手法」【マーケター・広告担当者必見!】
https://medix-inc.co.jp/webbu/data_analysis_seminarreport-6842
マーケティングDXと「AI」~AIを技術を活用してデータの処理や整理・判断をする~
近年、「AI」というキーワードが大流行しています。この「AI」もマーケティングDXに大きく関係しており、AIの技術を活用することで人間の限界を超えてデータの処理や整理・判断をすることができます。
統合されたデータには多種多様な項目がありますが、それを全て人間の目で解釈して判断することには限界があります。その判断する部分を機械の力、つまりAIに頼ることができるのです。
AIを活用することで、今まで人の力ではできなかった粒度での顧客のセグメント構築ができたり、また売上の予測などが可能になります。AIで出した結果をマーケティングに活用することで、今までは到底成し得ることができなかったレベルでのマーケティング施策の実現、まさにデジタルトランスフォーメーション(DX)を成し得ることができます。AIを上手く活用できるかどうかが今後のマーケティングDXの非常に重要なポイントになるといえるでしょう。
マーケティングDXとポストCookie対策~ファーストパーティーデータの活用~
2017年から導入されたiOSのITP(IntelligentTrackingPrevention)や、GoogleChromeの3rdPartyCookie廃止(2023年予定)など、今までデジタルマーケティングにおいて当たり前に利用されてきたCookie利用に制限が掛かることで、ウェブサイトに訪れるユーザを特定することが困難になります。そのため、サイト訪問者に対するリターゲティング広告の減少や、コンバージョン計測の欠損が発生し、その代替案としてのポストCookie対策と呼ばれる代わりの手法が今後ますます求められてきています。ポストCookie対策としては色々な手法やツールが検討されていますが、その中でも「自社の1stPartyData」をいかに蓄積し活用していくか、つまりはデータ統合とデータ活用が非常に重要となり、大手企業を中心に既に対策を取り始めた企業も増えています。
前項までで述べてきたデータ統合、ダッシュボードによる可視化や分析、そしてさらにはAIの活用など、まさにマーケティングDXの取組を推進していくことが、ポストCookie対策に直結するといえます。
まとめ
マーケティング領域におけるデジタルトランスフォーメーション「マーケティングDX」が何なのか、企業はマーケティングDX実現のために何をすべきなのかについて、特にマーケターが注目すべき内容をお伝えしました。
現在においては一部の大手企業を中心に取組みは進んできているものの、まだまだ静観している企業も多いのが現状です。しかし、2023年に予定されているGoogleChromeの3rdPartyCookie廃止が実現すれば、従来のデジタルマーケティング施策だけでは今までのような成果を出すことはどんどん困難になっていきます。
今後はどのような規模の企業でもマーケティングDXを推進していく必要に迫られていることは確実ですので、この記事を参考にして頂き、マーケティングDXの第一歩を踏み出していきましょう。