リスティング広告を運用する中で、次のような疑問をお持ちではないですか?
「インテントマッチって何?」
「フレーズ一致との違いがわからない」
「インテントマッチはどのようなキーワードで使った方がいいの?」
インテントマッチは、広告主が設定したキーワードに関連する幅広い検索語句に対して広告を表示できる機能であり、利用することで新しい検索語句を発掘できるなどのメリットがあります。
しかし、注意点を知らずに利用してしまうと、効果を悪化させてしまう恐れもあるため、利用を検討している場合は、インテントマッチについての理解を深めておくことが重要です。
本記事では、インテントマッチの基本から、ほかのマッチタイプとの違い、インテントマッチのメリット・デメリットなど、事例を交えながら詳しく解説します。
リスティング広告を運用している方や、自社の状況がインテントマッチの利用に適しているか、を見極めたいと考えている方は、ぜひ、参考にしてください。
目次
インテントマッチ(旧:部分一致)とは?
リスティング広告におけるインテントマッチ(旧:部分一致)とは、指定したキーワードと関連性のある、幅広い検索クエリに対して広告を表示できるマッチタイプを指します。
マッチタイプとは、指定したキーワードに対して、広告を表示させる検索語句の拡張範囲を決めるもので、ユーザが入力した検索語句との一致度合いをコントロールする重要な要素です。元々は、「部分一致」という名称でしたが、2024年7月にユーザのインテント(意図)をとらえるという意味をもつ「インテント マッチ」へと変更されました。
マッチタイプの種類
マッチタイプは、現在「完全一致」「フレーズ一致」「インテントマッチ(旧:部分一致)」の3種類があります。
※過去には「絞り込み部分一致」というマッチタイプもありましたが、「フレーズ一致」のアップデートにともない、2021年7月時点で新規利用は廃止されました。
各マッチタイプの定義は、次のとおりです。
完全一致
完全一致は、指定したキーワードと全く同じ意味、もしくは同じ意図で検索された場合に広告が表示されます。ほかのマッチタイプよりも、広告の表示対象を絞りこむことができるため、ターゲットユーザにピンポイントにアプローチしたい場合に効果的です。
引用:キーワードのマッチタイプについて(Google広告 ヘルプ)
完全一致について、詳しくは次の記事を参考にしてください。
【Google広告・Yahoo!広告】完全一致とは?概要やフレーズ一致との違い、利用シーンを解説
フレーズ一致
フレーズ一致は、指定したキーワードと同じ意味の検索語句に対して広告を表示できるマッチタイプです。文言に差があっても、同じ意味に解釈できる場合は一致と見なされます。例えば、「テニスシューズ」というキーワードを指定した場合、「テニス用の靴」や「赤いテニスシューズ」にも広告が表示されます。完全一致よりも広く、インテント マッチよりも狭い範囲で広告を掲載することができます。
引用元:キーワードのマッチタイプについて(Google広告 ヘルプ)
フレーズ一致について、詳しくは次の記事を参考にしてください。
【Google広告・Yahoo!広告】フレーズ一致とは?部分一致との違いやメリット、類似パターンを解説
インテントマッチ(旧:部分一致)
指定したキーワードと同じ語句以外にも、同義語や、関連語、文脈的に関連性があると判断できる語句に対して、広告が表示されます。これには、指定したキーワードの語句そのものが入っていない検索も広告の表示対象に含まれます。例えば、「一人旅 温泉」というキーワードを指定した場合、「デトックス 温泉」「リフレッシュ旅行 おすすめ」などの検索語句にも広告が表示されます。3つのマッチタイプの中で、検索語句の拡張範囲が一番広いマッチタイプです。
引用元:キーワードのマッチタイプについて (Google広告 ヘルプ)
インテントマッチは、フレーズ一致や完全一致では捕捉できない検索語句にも表示範囲を拡張できる点がメリットですが、一方でリスクもともないます。インテントマッチのメリットとデメリットについて、次で詳しく説明します。
インテントマッチ(旧:部分一致)のメリット
先ほど説明したとおり、インテントマッチは、1つのキーワードから様々な検索語句をとらえることができる、最も拡張範囲の広いマッチタイプです。
そういった特性から、インテントマッチの導入には、次の2点のメリットが挙げられます。
- 新規キーワードを発掘できる
- 自動入札の精度が高く、コンバージョンが期待できる
詳しく解説します。
新規キーワードを発掘できる
インテントマッチのメリットは、新規キーワードの発掘が容易になる点です。
完全一致やフレーズ一致は、検索意図をコントロールしやすい一方で、キーワードを登録していないと広告が表示されることはありません。
検索語句は日々多様化し、新しい言葉や表現が生まれ続けています。Googleによると、Google検索の15% は、これまで一度も検索されたことがない新しい検索語句です。
そのため、増え続ける新しい検索語句に対して、人間が網羅的にキーワードを登録することは現実的ではありません。また、想定されるキーワードをすべて手動で登録していくことも非効率です。
インテントマッチを活用することで、広告主が想定していなかった関連キーワードにも広告を表示させることができ、潜在的なユーザにリーチできる可能性が大きく広がります。
例えば、「ダイエット」というキーワードをインテントマッチで設定すると、「効果的なダイエット方法」や「1ヶ月で5kg痩せたい」など、関連する様々な検索語句に対して広告が表示されるようになります。
加えて、ロングテールキーワード(複数の単語で構成されるキーワード)や、検索ボリュームの少ないキーワードでは、競合が少ないため、CPC(クリック単価)が比較的安価になる傾向があります。CPCが安価になれば、予算内で、より多くのユーザにアプローチすることができます。
自動入札の精度が高く、コンバージョンが期待できる
もう1つのメリットは、ほかのマッチタイプと比べて自動入札の精度が高く、コンバージョンの純増が期待できる点です。
自動入札では、同じ語句で検索しているユーザの中でも、よりコンバージョンしやすいユーザを予測して、広告の入札を行います。その予測の材料として、シグナルと呼ばれる様々な情報を利用します。シグナルとして利用できる情報の種類は、次の図のようにマッチタイプによって異なり、インテントマッチでしか利用できないシグナルが複数あります。
考慮される
シグナル |
キーワード | ランディングページの内容 | 広告グループに含まれるほかのキーワード | 過去の検索 | 見込まれるパフォーマンス | ユーザの所在所在地 |
完全一致 フレーズ一致 |
〇 | × | × | × | 〇 | × |
インテントマッチ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
インテントマッチでは、ユーザの過去の検索内容や、ユーザの所在地、ランディングぺージの内容、広告グループ内のほかのキーワードといった様々な情報を加味した入札が行われます。そのため、ユーザの検索意図をより正確に把握し、適切なタイミングで最適な広告を表示することが可能です。
例えば、ユーザが「rose」というキーワードで検索した場合、ユーザの過去の検索履歴を考慮することで、「バラの花」を探しているのか、「ロゼワイン」を探しているのかを判断し、より関連性の高い広告を表示できます。
このように、インテントマッチは、豊富なシグナルをもとにした精度の高い自動入札によって、広告の費用対効果の改善につながる可能性があります。
実際に、弊社が支援させていただいているお客様の広告アカウントにおいても、インテントマッチを導入したことで、CV数(コンバージョン数)の拡大、CPA(コンバージョン単価)の改善につながった実績があります。
※インテントマッチ導入前後4週間の比較データ
インテントマッチ(旧:部分一致)のデメリット
先ほど紹介したとおり、インテントマッチは、適切に活用できればメリットがありますが、キーワードの拡張は、時としてデメリットになることもあるため、注意が必要です。
ここでは、インテントマッチのデメリットについて、詳しく紹介します。
意図しない検索語句への拡張
インテントマッチは、設定したキーワードに関連する、様々な検索語句に広告を表示できる一方で、意図しない検索語句へ拡張されるリスクがあります。
例えば、賃貸仲介サービスを提供している広告主が、「マンション 賃貸」というキーワードをインテントマッチで設定した場合、「マンション 引越し」といった、物件を探す意図とは異なる検索語句にも広告が表示されてしまう可能性があります。
このように、意図しない検索語句へ広告を表示させてしまうと、広告費用に無駄が生じるだけでなく、場合によってはブランドイメージを損なう可能性もあるため、注意が必要です。意図しない検索語句への拡張を防ぐためには、定期的な検索語句の確認と除外キーワードの設定が非常に重要です。
検索語句のメンテナンスに手間がかかる
もう1つのデメリットは、検索語句のメンテナンスに手間がかかることです。
前項で説明したように、インテントマッチでは、設定したキーワードに対して意図しない検索語句へも広告が配信される場合があります。フレーズ一致でも、前後にネガティブなワードが含まれている検索語句へ配信してしまう可能性はありますが、インテントマッチは、より多くの検索語句をとらえるため、想定していない検索語句まで拡張して配信されるリスクが高まります。
また、新たな検索語句を発掘し、追加していく中で、関連性の低いワードを設定してしまうこともあるため、検索語句の確認と除外は、一度だけではなく継続的に行う必要があります。
メンテナンスを怠ると、メリットよりデメリットが上回り、広告の効果が悪くなってしまう可能性があるため、気を付けましょう。
インテントマッチ(旧:部分一致)の成功事例
ここでは、インテントマッチを導入し、CVの拡大につながった効果改善事例を紹介します。
■広告運用のKPI
会員登録
■インテントマッチ導入の背景
CV数の獲得が頭打ちになっていたため、CV数の底上げを目的にインテントマッチを導入
■実施内容
フェーズ1:関連性の低い検索語句にも広告配信が拡張される可能性を考慮して、拡張が広がりすぎないように、2トークン以上のテールキーワードにおいてインテントマッチを利用した。
フェーズ2:フェーズ1の結果から、ある程度の効率を維持できることが分かったため、1トークンのBIGキーワードをインテントマッチに変更。
■結果
・全CVのうち、インテントマッチで獲得したCVシェアが10%まで増加
・(ほかのマッチタイプの)平均CPAと比較して、獲得効率を約90%まで改善
どんなときにインテントマッチ(旧:部分一致)を使うべき?
インテントマッチのメリットとデメリットを紹介しましたが、自社の広告の目的に対して、インテントマッチのメリットが活かせる状況であるかを踏まえて、導入についての判断をすることが重要です。
ここでは、インテントマッチを活用すべき場合と避けるべき場合について、解説します。
コンバージョンを拡大したい場合に活用する
インテントマッチの利用は、リスティング広告の運用の目的が「コンバージョン数の拡大」の場合、特に有効です。
インテントマッチの特長である、検索語句の拡張範囲の広さは、一語一語キーワード登録する手間がかからない効率的な面はもちろんですが、人がとらえきれない新規キーワードの発掘ができるメリットをもたらします。
これにより、フレーズ一致や完全一致では拡張できなかった検索語句における機会損失を減らし、コンバージョンの獲得機会を最大化することが可能です。
リスクを抑えたい、予算が限られている場合は活用を避ける
リスクを抑えたい場合や予算が限られている場合は、インテントマッチの利用は避けた方が無難です。
インテントマッチでは、設定したキーワードに関連する幅広い検索語句に対して広告が表示され、想定外のキーワードにも広告が配信される可能性が高くなります。その結果、関連性の低いユーザにも広告が表示され、クリック率やコンバージョン率の低下を招く恐れがあります。
また、想定よりも速いペースで予算を使い切ってしまい、重要なキーワードでの広告表示機会を逃してしまうリスクもあります。
このようなリスクを避けたい場合は、フレーズ一致や完全一致など、より制御しやすいマッチタイプを選択しましょう。これらのマッチタイプを使用することで、より精度の高いターゲティングが可能となり、限られた予算でも効果的な広告運用を行うことが可能です。
インテントマッチ(旧:部分一致)を効果的に活用するためのポイント
ここでは、インテントマッチを効果的に活用するためのポイントを紹介します。
自動入札を活用する
インテントマッチのメリットを活用するためには、自動入札の利用が不可欠です。
自動入札とは、Googleの機械学習アルゴリズムを利用して、各オークションごとに最適な入札単価を自動的に設定する機能です。一般的に、機械学習の学習データとなる指標が多ければ多いほど、精度が高くなるといわれています。
そのため、ほかのマッチタイプよりも多くのシグナルを使用できるインテントマッチは自動入札と相性がよく、コンバージョンにつながりやすい検索語句に対して効率的に広告を表示できます。
拡張するキーワードの選定
インテントマッチは、キーワードによって検索語句の拡張範囲が異なるため、利用する際はキーワードを適切に選定することが重要です。
例えば、「眼鏡」をキーワードとしてを設定した場合、「コンタクト」のような関連性の低い検索語句に対しても広告表示されるリスクは高まりますが、一方で、CVしやすいニッチなキーワードをより多く発掘できる可能性も高まるため、ハイリスク・ハイリターンなキーワードといえます。
一方で、「眼鏡 子供用 スポーツ」という、より具体的なキーワードを登録した場合は、関連性が低い検索語句に広告表示されるリスクは低くなりますが、拡張幅が狭くなる分、意図しない検索語句を発掘できる可能性は低いでしょう。
このような違いを把握し、今の検索広告の方針から、キーワード選定をすることで、インテントマッチの導入を失敗するリスクを抑えることができます。
除外キーワードの登録
インテントマッチを使用すると、検索語句が広い範囲まで拡張される可能性があります。そのため、定期的に検索語句をチェックすることが重要です。
導入直後は、明らかに関連性が低いと判断される検索語句や不適切な語句が含まれる検索語句を除外していきます。「コストシェアが高く」「CPA・ROASが基準よりも高い」検索語句は、除外しましょう。
クリエイティブの改善
インテントマッチを導入した後には、反応する検索語句の幅が広がるため、広告クリエイティブの最適化も進めていく必要があります。
まずは、検索語句のレポートを確認し、インテントマッチを導入したことにより、新たに発掘された検索語句を中心に、高いパフォーマンスを示している検索語句を特定します。
次に、新たに発掘した検索語句から、ユーザの検索ニーズや、検索意図を分析し、リスティング広告の見出しと、説明文の内容に、反映させましょう。
このように、キーワードや検索語句と、見出しや説明文の内容の関連性を高めることで、クリック率が上がる可能性が高く、より高い広告の効果につながります。
まとめ
リスティング広告を運用するのであれば、目的や目標に合ったキーワードマッチタイプを選ぶことが重要です。
特にインテントマッチは、マッチタイプのなかで最も柔軟性が高く、最も広く検索語句にリーチできるため、指定したキーワードを含まない検索語句にも広告を表示できます。
フレーズ一致や完全一致では捕捉できない、関連性の高い検索語句にも広告を表示できるため、より多くのチャンスを生むことが可能です。
ただし、インテントマッチは意図しない検索語句への拡張が起こったり、除外キーワードのメンテナンスに時間がかかったりなど、一定のデメリットも存在するため、自社の目的や目標に合っているか見極めてから活用することが大切です。
リスティング広告の運用方法やキーワードマッチタイプによる効果の違いなどについて、疑問や不安がある場合は、専門家に相談しましょう。