リスティング広告の、キーワードマッチタイプの種類とその概要を、しっかりと理解しているという方は少ないのではないのでしょうか。
その中で、フレーズ一致は、キーワード(※1)と同じ意味を含む検索語句(※2)に対して広告を表示するためのマッチタイプで、キーワードやその語順がターゲティング精度を左右します。
※1 キーワード:本記事では、広告の管理画面で運用者が登録するキーワードを指します。
※2 検索語句:本記事では、ユーザが検索エンジンに入力する語句を指します。「クエリ」「検索クエリ」とも呼ばれます。
本記事では、混同してしまいがちな部分一致(インテントマッチ)や完全一致との違いや、フレーズ一致の活用シーンを解説します。ぜひ、最後まで読んでいただき、適切なマッチタイプ選択のコツを掴んでいただければと思います。
目次
リスティング広告におけるマッチタイプとは
リスティング広告は、ユーザが検索エンジンに入力した検索語句に反応して広告が表示される仕組みです。マッチタイプとは、その検索語句に対して広告を表示させるかどうかを決める拡張範囲の分類です。現在、マッチタイプは部分一致(インテントマッチ)・フレーズ一致・完全一致の3種類があります。
※過去には「絞り込み部分一致」というマッチタイプもありましたが、「フレーズ一致」のアップデートにともない、2021年7月時点で新規利用は廃止されました。
各マッチタイプで、語句の拡張範囲が異なり、配信量も異なります。拡張範囲が1番広い部分一致(インテントマッチ)は、フレーズ一致や完全一致で反応する検索語句を含みます。同様に、フレーズ一致は完全一致で反応するキーワードを含みます。
広告の目的によって、適切なマッチタイプを使い分けることが求められます。
詳しくは、次の表とイメージ図をご確認ください。
部分一致(インテントマッチ) | フレーズ一致 | 完全一致 | |
表示条件 | 登録したキーワードに関連する内容の検索 | 登録したキーワードと同じ意味の内容を含む検索 | 登録したキーワードとまったく同じ意味、または意図の検索 |
拡張範囲 | 広い | 中間 | 狭い |
配信量 | 多い | 中間 | 少ない |
管理画面での表記 | – (そのまま) | ” “(二重引用符) | [ ](角かっこ) |
▼キーワード「1人旅 温泉」の拡張範囲のイメージ図
参照:キーワードのマッチタイプについて(Google広告ヘルプ)
フレーズ一致とは
フレーズ一致の語順
これまでのフレーズ一致では、設定したキーワードの語順が同じ、かつ類似パターンのみが一致となり、検索語句の間に違う語句が入った場合は広告が表示されませんでした。
しかし、2021年のアップデート以降、検索語句の語順とキーワード外の語句は、広告の表示に影響せず、同様の意味が検索語句にも含まれているかが重要視される仕様に変更されました。語順が考慮されるのは、語順によってキーワードの意味が変わる場合のみです。
例)キーワード:”東京から神奈川 引越しサービス”
- マッチする検索語句
「手頃な価格の引っ越しサービス 東京から神奈川まで」
「東京の会社 引越しサービス 神奈川まで」 - マッチしない検索語句
「引っ越しサービス 神奈川から東京」
フレーズ一致の類似パターン
フレーズ一致で登録したキーワードは、次のような6つの類似パターンも、自動的に一致と見なされます。そのため、表現の細かい違いを網羅するために、多数のキーワードを登録する必要はありません。
類似パターン | キーワード | マッチする検索語句 |
誤字・表記のゆれ単数 ・複数の違い | 振り込み | 振込 |
意味が同じで語順が異なる | 赤い シューズ | ランニング シューズ 赤 |
助詞や接続詞の有無 | 冬のぼうし | 冬 ぼうし セール |
一部語句の省略 | ステレオ用ヘッドセット | ステレオ ヘッドセット セール |
類義語や言い換え | スイムウェア | 赤い 水着 |
検索意図が同じ語句 | 無料素材 画像 | フリー素材 野球の画像 |
参照:キーワードの類似パターン(Google広告ヘルプ)
参照:フレーズ一致について(Yahoo 広告ヘルプ)
フレーズ一致の除外キーワード
除外キーワードとは、リスティング広告で、サイトの内容や商品と関係のない特定の検索語句に対し、広告を表示しないよう除外する設定のことです。自社の商品やサービスと関係のない文脈で広告が表示されるのを防ぎ、無駄な広告費を削減できるため、適切に設定しましょう。
除外キーワードのマッチタイプの拡張範囲は、通常のキーワードと異なるので注意が必要です。
フレーズ一致を除外キーワードに使用する場合、検索語句とキーワードが、語順も含めて全く同じ場合、広告が表示されなくなります。また、検索語句にキーワードと別の語句が含まれていても、すべてのキーワードの語順が同じであれば、広告は表示されません。例えば、「ランニング シューズ」をフレーズ一致で除外キーワードとして設定した場合、「ランニング シューズ」だけではなく、「青 ランニングシューズ」と別の語句が含まれている検索語句にも広告は表示されません。
ただし、「ランニングの靴」のように、意味・語順が同じでも登録したキーワードと語句が異なる場合は、除外されずに広告が表示されます。
引用:除外キーワードについて(Google広告ヘルプ)
語順に関係なく、該当語句が含まれているときに必ず除外したい場合は、部分一致(インテントマッチ)を使用しましょう。
フレーズ一致とほかのマッチタイプとの違い
完全一致との違い
完全一致は、指定したキーワードと同じ意味や意図の検索語句に対して広告が表示されます。マッチタイプの中では最も拡張範囲が狭く、広告の表示対象を絞り込むことができます。しかしその分、広告表示対象となる検索の数はフレーズ一致と部分一致よりも少なくなります。
例)キーワード:ランニング シューズ
- マッチする検索語句
ランニング シューズ、ランニング 靴、シューズ ランニング
部分一致(インテントマッチ)との違い
部分一致は、指定したキーワードに関連する内容の検索が広告の表示対象となります。マッチタイプの中で最も拡張範囲が広く、キーワードの語句そのものは入っていない検索も含まれます。そのため、部分一致を使用するとほかのマッチタイプ(完全一致やフレーズ一致)を指定する必要がなくなります。すべてのキーワードには、デフォルトで部分一致が割り当てられています。
例)キーワード:ランニング シューズ
- マッチする検索語句
ランニング シューズ おすすめ、走りやすい靴、運動用 靴
また、部分一致は配信量が多い分、機械学習との相性が良く、Google広告では利用が推奨されています。現在はAI活用も進み、検索語句の背後にある、ユーザの検索意図を詳細に理解できるようになってきており、検索語句とキーワードのマッチング精度も上がっています。
一般的に、毎日15%もの新たな検索語句が生まれていると言われているなか、日々増加する検索語句を手動で捕捉し、検索需要をとらえていくことは、あまり現実的ではありません。
メディックスでは、完全一致やフレーズ一致に登録されているキーワードを、部分一致にも重複入稿することを推奨しています。
※完全一致にすでに登録されている場合は、そちらが優先的に配信され、その後にフレーズ一致or完全一致キーワードへ配信されるため、重複入稿によって完全一致のパフォーマンスに影響を与えることはありません。
フレーズ一致のメリット
フレーズ一致は、ターゲティングの精度を維持しつつ、広範囲な検索語句に対応する柔軟性があります。次にフレーズ一致のメリットを具体的に紹介します。
完全一致よりも配信対象を広げることができる
フレーズ一致は、ユーザが様々な表現を使用していても意味が同じであれば対応でき、完全一致よりも配信対象が広いため、広範囲なオーディエンスに対して効率的にアプローチが可能です。
例えば、「青い靴」というキーワードをフレーズ一致で設定すると、「安い 青い靴」や「疲れない 青い靴」のような検索語句にも対応可能です。このように、ニーズの異なる検索語句や、予測しきれない検索語句に対して、幅広くカバーすることができます。
広告費を節約することができる
部分一致は、より広範囲の検索語句に対応しているものの、登録したキーワードと関連性が低い検索語句にも広告が表示される可能性があり、無駄なクリックが発生してしまうことがあります。しかしフレーズ一致は、キーワードの意図に、より近い検索語句をターゲットに広告を配信するため、部分一致よりは無駄なクリックが発生するリスクを下げることができます。
※ただし、適切にチューニングをすることで、部分一致における無駄なクリック発生のリスクを軽減することができます。定期的に配信結果を確認し、関連性の低い検索語句を除外して、より狙いたい検索語句に広告配信できるよう最適化していくことが重要です。
フレーズ一致のデメリット
フレーズ一致は多くのメリットを持つ一方で、ほかのマッチタイプと比較した際のデメリットもあります。
機会損失の可能性がある
フレーズ一致は、部分一致よりも拡張範囲が狭いため、必然的に広告の表示回数は少なくなります。2021年のアップデートにより、フレーズ一致の拡張範囲は広がりましたが、コンバージョンが発生する可能性のある検索語句に対して、キーワードの登録が不足している場合には、広告表示の機会を逃してしまう可能性があります。機会損失を減らすためにも、コンバージョン確度の高い検索語句を網羅できるようにキーワードを登録しましょう。
クリック単価が高くなる可能性がある
フレーズ一致は、よりコンバージョン確度が高いターゲットに絞った広告配信を可能にしますが、自社が狙いたい検索語句は競合も狙いたい検索語句なので、広告の表示機会を得るための競争が激しくなり、クリック単価が高騰する可能性があります。
これらを踏まえ、フレーズ一致のデメリットも理解して、ほかのマッチタイプも活用しながら、広告効果を最大化していくことが重要です。
フレーズ一致の利用が有効なシーン
3種類のマッチタイプがある中で、フレーズ一致を有効に活用できるシーンを具体的に解説します。
リスクを減らして、より慎重に広告配信したいとき
広告予算が少ない場合や、初めて広告を配信する時など、リスクを最小限に抑えたい場合は、フレーズ一致が効果的です。メリットで紹介したとおり、フレーズ一致は、部分一致よりも検索意図に近い検索語句をターゲットに広告が表示されます。無関係なユーザに対して広告が表示されるリスクを抑えられ、より効率的にクリックを獲得しやすいです。
コンバージョンに近いキーワードを設定するとき
ユーザが、商品を購入する時や、サービス利用を検討している時に検索するキーワードは、コンバージョンする前の重要な接点です。フレーズ一致を利用することで、より検索意図に合った広告を表示させ、検討フェーズにいるユーザへ効率よくアプローチできます。
エリア系のキーワードを設定するとき
地域特化型のビジネスにおいて、エリア系キーワードは非常に重要です。エリア名を含むキーワードをフレーズ一致で登録することで、ローカライズされた検索語句に対して、潜在層へも効率的に広告を表示させることが可能になります。
例えば、「新宿 居酒屋」をキーワードとして登録した場合、「新宿 居酒屋 安い」や「新宿の居酒屋 おすすめ」「居酒屋 新宿 個室」など様々なニーズの検索語句をカバーすることが可能です。
競合他社へ、自社キーワードの除外設定を依頼するとき
競合が自社の商標やブランド名を無断でキーワードに使用している場合、自社関連のキーワードをフレーズ一致で除外設定するよう依頼します。そうすることで、自社に関連した検索語句に対して競合の広告が表示されることを避け、自社のイメージやブランドを保護しつつ、適切なタイミングでの広告表示が可能となります。
フレーズ一致の設定方法
Google広告での設定方法
- Google広告アカウントにログインし「検索キーワード」を開く
Google広告ダッシュボードにアクセスし、キャンペーンタブの「オーディエンス、キーワード、コンテンツ」から「検索キーワード」を選択します。 - キーワードの新規登録
「+」をクリックし、キーワードを追加するキャンペーンと広告グループを選択します。 - キーワードの入力
フレーズ一致に登録したいキーワードを” “(二重引用符)で囲んで入力します。
※マッチタイプは後から変更可能です。 - キーワードを保存
「保存」をクリックし、キーワードを保存します。
Yahoo広告での設定方法
- 1.Yahoo広告アカウントにログイン
Yahoo広告ダッシュボードにアクセスし、キャンペーンタブから、キーワードを追加するキャンペーンを選択します。 - 「キーワード」タブの「+キーワード作成」をクリック
「キーワード」タブの「+キーワード作成」をクリックします。 - キャンペーンと広告グループを選択
キーワードを登録したいキャンペーンと広告グループを選択し、キーワード作成画面に進みます。 - マッチタイプを選択し、キーワードを追加
キーワードを入力し、入力欄の下のセレクトボックスからマッチタイプ「フレーズ一致」を選択します。 - キーワードを追加
「キーワードを追加」で、右側のキーワード候補へ追加します。
キーワードは1000件まで、まとめて作成可能です。 - キーワードを作成
キーワードの作成のみの場合は、左のボタン「キーワードのみ作成して完了」をクリックします。キーワードに対する広告も作成する場合は、右のボタン「続けて広告を作成する」をクリックし、広告作成に進みます。(どちらをクリックしても、キーワード自体は作成されます)
まとめ
マッチタイプの1つであるフレーズ一致は、キーワードと同じ意味を含む検索語句に対して広告を表示するためのマッチタイプで、低予算で広告を配信したいときや、エリア系キーワードを活用したいときに効果的です。
それぞれのマッチタイプにメリットとデメリットがあり、適切なシーンで使い分けることが重要です。各マッチタイプの特長を正しく理解し、設定の目的を明確にした上で、適切なマッチタイプを設定していきましょう。