2024年10月16日、株式会社メディックスと株式電算システムは、共催セミナー『【実演デモと事例でわかる】顧客データ・GA4データを読み解くBigQuery×BI活用法』を開催しました。本セミナーでは、データを統合する箱であるBigQueryの構造、SQLを使ってのデータ処理、無料で使えるBIであるLooker Studioによるレポート作成までの一連の流れを、エンジニアの実演を行いました。
この記事では当日に参加できなかった方向けに、セミナーの内容を抜粋して紹介します。ご興味のある方は、記事末尾のフォームからアーカイブ動画を視聴ください!
目次
1:登壇者紹介
株式会社メディックス
マーケティングデザインユニット
データエンジニア
松尾 一平
株式会社メディックスは、GoogleやYahooのような集客メディアの広告運用から、今日のテーマにあるGAなど幅広くサービスを提供するデジタルマーケティングの総合コンサルティング会社です。
我々の所属するマーケティングデザインユニットでは、Web解析や、KARTEやCRMコンサルティングおよび、データ活用を通してクライアントビジネスに貢献していくという事を主にやっています。
株式会社電算システム
プリセールスエンジニア/Google Cloudプロダクト推進
新 直哉
電算システムはGoogle Cloud パートナーとして、BigQueryやLooker Studio等のGoogle 製品を活用したデータ分析サービスを提供しており、長年のシステム構築の知見や経験、Google に精通したエンジニアリングサポートに強みを持っています。また、弊社が提供しているマーケティングDXを支援するソリューションは、BigQueryやLooker Studio等のGoogle 製品を活用し、顧客のデータマーケティング基盤を構築しています。
※登壇者の肩書はセミナー当時のものです。
2:はじめに|「マーケティングがうまくいかない」時のよくあるお悩み
私たちは日々、さまざまな業界・業種のお客様に対し、データ活用のご支援を行っています。その中で、多くのお客様が共通の課題感を抱えていらっしゃると感じています。
特に、データ活用の主担当がマーケティング部門であることが多いため、マーケティング成果を最大化するためにデータを活用した取り組みを進めたい、というご要望をよくいただきます。しかし、その一方で、以下のようなお悩みをお聞きすることも少なくありません。
「膨大なデータがあるのに有効活用できていない」
「売上データとサイトのアクセスデータがバラバラで現状把握がしづらい」
「売上は伸び悩んでいるのに、原因か分からない」
なぜこういった課題が生じるのかというと、「データ分析に基づいた意思決定ができていない」「そういうことができる環境が整備されていない」からだと、我々は考えております。
データに基づいた意思決定
こちらは、「データに基づいた意思決定」を実現するために必要なデータ環境の概略図です。この図が示すように、データ取得、データの蓄積、データの可視化・分析という一連の環境を整えることが重要だと考えています。
図に記載されているように、GA4をはじめとするさまざまなデータが、Google Cloudのデータウェアハウス(DHW)機能であるBigQueryという箱に集約・蓄積されます。蓄積されたデータは、GoogleのBIツールであるLooker Studioなどを用いて、さまざまな形式で可視化し、レポートとして活用することが可能です。
次に、よくある課題をこの一連の環境に当てはめてみると、以下のように整理できます。
- データがバラバラで現状把握がしづらい
→ これは、データ取得や蓄積のフローに課題があることを示しています。データが統合されていないため、全体像を把握するのが困難になっています。 - 膨大なデータを有効活用できていない
→ 蓄積されたデータが活用されていないことが原因です。可視化や分析のプロセスに至っていないため、データの価値が十分に引き出されていません。 - 売上停滞の原因究明ができていない
→ データを分析し、具体的な原因を探るプロセスが欠けていることが主な要因です。せっかくのデータが、意思決定に結びついていません。
データに基づいた意思決定を実現するためには、データの収集・蓄積、そしてデータの集計・可視化といった各プロセスで発生しがちな課題を解決する必要があります。
今回のセミナーでは、これらの課題を解決するための具体的な手法として、データの連携方法、BigQueryの活用方法、およびLooker Studioを用いた事例をご紹介します。
3:電算システム|売上データを使ったSQL実践とLooker Studioレポーティング
電算システムの主なサービスは、「情報サービス事業」「収納代行サービス事業」、そしてGoogle Cloudをはじめとする「クラウドサービス事業」の3本柱で構成されています。
特にGoogle関連サービス事業については、Googleの日本法人が設立された2006年から参入しており、LookerをはじめとするGoogleの多くのサービスを取り扱っております。
こちらの図は、電算システムのサポート範囲を示したものです。
ビジネスにおいてデータ利活用を進める際、一般的には左から順に「データ収集」「データ蓄積」「可視化」「データ活用」という4つのステップが必要になります。弊社では、Google Cloudを活用し、これらの全ステップをトータルでサポートしています。
本セッションでは、特に「データ蓄積」の部分に焦点を当て、データウェアハウスとして活用できるBigQueryについてご紹介いたします。
1)データ活用に欠かせないBigQuery / Looker Studioとは?
BigQueryとは
BigQueryとは、大容量、低価格なデータウェアハウスのサービスです。分析だけに集中し、本来データの持っている価値を引き出すことができます。また、裏側の部分がGoogleであるため、速度、インフラへの配慮は不要といえるほど強力と言えます。
Looker Studioとは
BigQueryでもデータの可視化は一部可能ではありますが、あくまでデータウェアハウスとしての機能がメインのサービスのため、その本分はデータの加工、集計、蓄積や分析であり、可視化に最適なツールとは言えません。そのため、可視化に特化したBIツールを組み合わせて使うお客様が多く、電算システムでは、まずはじめの可視化ツールとしては、Looker Studioをおすすめしております。Looker StudioはGoogleが無料で提供しているBIツールで、他のGoogleドライブや、GoogleスプレッドシートなどのGoogleサービスと同様、グループや自分以外のメンバーとレポートを共有したりすることも出来ます。また、先ほどご紹介いたしましたBigQueryやスプレッドシートはもちろんのこと、対応している他社サービスともデータ連携が可能です。
Gemini in BigQueryとは
最近では「生成AI」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
Googleでは、Geminiという生成AIがあり、BigQueryのSQLクエリ自動生成をサポートする機能の開発が進んでいます。例えば、図にあるように、SQL言語を直接書かなくても、自然言語(日常的に私達が使う、いわゆる話し言葉)でやりたいことを記述するだけで、Geminiが自動的にSQLクエリを生成してくれる機能や、データの検出、簡単な可視化といった処理を実現できるようになります。
ここからはBigQueryの画面を投影しながら、実際にSQLの基礎といわれるSELECT文、FROM句、WHERE句など、基本的なSQLを実行し、結果を解説しています。
セミナーアーカイブ動画はこちら
【アーカイブ動画】顧客データ・GA4データで読み解くBigQuery×BI活用法
(動画視聴お申込みページへリンクします)
2)BigQueryを活用した事例のご紹介 / まとめ
こちらは、ECデータを用いたLooker Studioのサンプルダッシュボードです。このように、SQLで処理した会員情報や売上情報を、自由に描画することができます。
自社の情報以外でも、例えば、気象庁が公開している天候データと売上データをBigQuery上で統合することで、データ同士の相関関係を確認することが可能です。すると、一見関係のないデータでも、統合して可視化することで、新たな示唆が得られることがあります。
このように、さまざまなデータをBigQueryに取り込み、Looker Studioのダッシュボード上で掛け合わせて分析することで、より深い洞察が得られる事例をご紹介させていただきました。
まとめ
では本セッションのまとめをさせていただきます。
・BigQuery は安く、早く、すぐ使えて、データ分析だけに集中できる
・BigQueryではSQLを使ってビッグデータの加工や集計ができる
・LookerStudioはノーコードでデータをグラフィカルに表現できる
・LookerStudioとBigQueryを組み合わせて使うことで、様々なデータを簡単に可視化し、洞察を深めることができる
BigQueryとLooker Studioを組み合わせて活用することで、さまざまなデータを簡単に統合・可視化し、ビジネスの意思決定に役立てることができます。ぜひ、データ活用を推進し、ビジネス成果の最大化に繋げてください。
4:メディックス|マーケティングデータを使ったLooker Studioレポーティング
データ分断がマーケティング成果を阻む理由
さっそく事例をベースにBigQueryの活用方法をご紹介していくのですが、なぜ我々がマーケティングの観点でデータの統合を推進しているのか、少しお話させてください。
GA4は基本的にサイト上のデータしか取得できませんが、マーケティングの観点から考えると、ユーザーがサイトに訪問する前のデータ、例えば、ユーザーのニーズや興味関心のデータ、広告データ、ECサイトなら顧客情報や売上データ、BtoB企業ではSFAに蓄積されている営業活動データなども含めて、マーケティングデータと呼ばれる範囲になります。
冒頭でご紹介した「マーケティングがうまくいかない時のよくあるお悩み」にも関連しますが、実際には、多くの企業がそれぞれのデータが分断されている状況にあります。この状態では、本来見えるはずの相関関係や因果関係に気づけず、クリティカルなマーケティング施策を打てずに、成果が上がらないということが起こり得ます。
そこで、役に立つのがBigQueryです。具体的には、統合したいそれぞれのデータに共通のキーをもたせておいて、それらをBigQuery上で紐づけることで、例えば広告コストとGA4の行動データ、SFAの商談データと一貫して確認することができるようになります。
本日は皆さまのマーケティング改善のヒントとして、GA4データに加えて、SEOデータやSFAデータを活用した事例を、デモを交えながらご紹介いたします。
具体的なデータ連携手法
GA4やサーチコンソールについては、BigQueryと直接連携する機能がツール自体に備わっているため、設定画面から連携機能をオンにするだけで、毎日データが自動的にBigQueryにエクスポートされていきます。
しかし、GA4やサーチコンソール以外のツール、例えばYahoo!広告やMeta広告など、多くのデータソースは直接連携機能を持っていないケースが多いです。こういったデータをBigQueryに集約するためには、主に2つの方法があります。
1. ETLツールを使う方法
ETLツールは、各種データソース(Yahoo!広告、Meta広告、Salesforceなど)とBigQueryの間をつなぎ、データの抽出・変換・読み込み(ETL)を自動化する機能を持っています。
- 例えば、データビードやtroccoなどのETLツールがよく使われます。
- 一度設定すれば、毎日自動でデータがBigQueryに流し込まれ、集計や分析が効率的に行えます。
- ただし、ETLツールは別途契約が必要なため、費用が発生します。
2. Googleスプレッドシートを使う方法
費用を抑えて簡易的に連携する方法として、Googleスプレッドシートを活用することも可能です。
- スプレッドシート上に、BigQueryが取り込めるフォーマットでデータを準備します。
- BigQuery側で取り込み設定を行うことで、スプレッドシートからデータのインポートを自動化することができます。
ただし、スプレッドシートのデータの準備は手作業が多くなるため、完全自動化は難しい点がデメリットです。
事例:広告データ×SFAデータによる広告効果改善
こちらは、不動産投資ビジネスを展開されている武蔵コーポレーション株式会社様の事例です。ビジネスモデル上、広告で集客したユーザーが、ウェブ上の物件予約などのコンバージョン後に、オフラインでの商談、成約といった本来の成果につながったかを評価する必要があります。
そこで、広告をはじめとしたWeb上のコンバージョンデータと、SFA上の商談や成約状況までをBigQuery上で紐づけることで、オンライン・オフライン両面の成果を統合的に評価する仕組みを実現しました。
具体的なステップを解説します。この事例では、上記の「Googleスプレッドシートを使う方法」(広告データやSFAデータをGoogleスプレッドシート経由でBigQueryに取り込む方法)を採用しています。
ステップ1:データ収集
- 広告データの収集
- 広告媒体(Yahoo!広告、Google広告、Meta広告など)から、コストデータ、クリック数、インプレッション数などのデータをエクスポート。
- データをGoogleスプレッドシートに貼り付け、フォーマットを整備。
- SFA(Salesforce)データの収集
- 商談状況や成約データをSalesforceからエクスポート。
- こちらもGoogleスプレッドシートに貼り付けて整理。
ステップ2:データの紐付け
- GA4データとの統合
- GA4のカスタムディメンションを活用し、広告のUTMパラメータを基にデータを整理。
- UTMパラメータがキーとなり、広告媒体のデータとGA4の流入データがBigQuery上で紐付けられる。
- コンバージョン後のリード追跡
- コンバージョンしたリードに対して、GA4のカスタムディメンションを用いてリードIDを記録。
- リードIDをキーに、商談データ(SFAデータ)とGA4のデータを統合。
ステップ3:BigQueryへのデータ取り込み
- スプレッドシートのBigQuery連携
- GoogleスプレッドシートをBigQueryのデータソースとして設定。
- スプレッドシートに新しいデータが追加されるたびに、BigQuery側で自動更新されるよう設定を構築。
- データの一元化
- 広告データ(コスト、クリック、インプレッション)、GA4データ(流入データ)、SFAデータ(商談・成約状況)がすべてBigQuery上で統合され、一貫したデータ基盤を作成。
ステップ4:データの可視化
- Looker Studioの活用
- BigQuery上で統合したデータをLooker Studioに接続。
- ダッシュボードを作成し、広告ごとのオンラインデータ(コスト、クリック数、コンバージョン数)とオフライン成約を含めた広告費用対効果を可視化。
ステップ5:データ活用
- 広告施策の最適化
- ダッシュボードを活用し、広告ごとのパフォーマンスを詳細に評価。
- 特にオフライン成約を含めた広告費用対効果を指標とし、広告運用の方針を最適化。
- オフライン成果を含めた評価基準の導入
- 従来は測定が難しかったオフラインでの商談・成約データを活用することで、広告施策全体の精度を向上。
ここからは、BigQueryやLooker Studioを活用することで、どのような分析や可視化が可能になるのかについて、具体的なデモを交えながら解説していきます。
「主要データのダッシュボード、流入元×ランディングページ分析用レポート、サーチコンソールデータを使ったSEOレポートなどを実際に作ってみます。
セミナーアーカイブ動画はこちら
【アーカイブ動画】顧客データ・GA4データで読み解くBigQuery×BI活用法
(動画視聴お申込みページへリンクします)
5:まとめ
データに基づいた意思決定を実現するには
今回のセミナーでお伝えしたかったのは、マーケティングにおける課題を解消し、データを活用してビジネス成果を最大化するために重要な3つのポイントです。
1. データを分断しないこと
- マーケティングやビジネスの成果を上げるためには、本来活用すべきすべてのデータを、一箇所に集約し、分断をなくすことが重要です。
- 広告、アクセスログ、顧客データ、営業データなど、異なるデータソースをつなげることで、見落としていた相関や因果関係に気づくことができます。
2. 目的や意図を持ってデータをつなぐこと
- データを連携させる際には、単に集約するだけでなく、「なぜこのデータを結びつけるのか」「何を明らかにしたいのか」という明確な目的を持つことが必要です。
- BigQueryを中心としたデータ基盤を活用することで、マーケティングのゴールに沿った統合が可能になります。
3. 示唆を得るためのレポートを作成すること
- すでにLooker Studioをご活用の方もいらっしゃるかと思いますが、大切なのは「見るためのレポート」ではなく、「正しい示唆を得るためのレポート」を作ることです。
- ダッシュボードやレポートの設計を工夫することで、データに基づいた具体的なアクションを導き出すことができます。
最後に
データを有効に統合・活用し、適切なレポートを通じて正しい示唆を得ることで、マーケティングの成果を最大化し、さらにはデータに基づいた意思決定を実現していただけるはずです。
ぜひ、今日お話しした内容を参考に、データ活用の仕組みを構築し、皆さまのビジネスにお役立ていただければ幸いです。
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本セミナーは下記よりアーカイブ動画として全編をご視聴いただけます。ご興味のある方はぜひご覧ください。
【アーカイブ動画】顧客データ・GA4データで読み解くBigQuery×BI活用法
(動画視聴お申込みページへリンクします)
※本記事は、2024年10月16日に開催された「顧客データ・GA4データで読み解くBigQuery×BI活用法」の講演内容を要約したものです。
※記載内容は当時の情報を元にしておりますので、予めご了承ください。また、登壇者の肩書などはセミナー当時のものとなります。