Webマーケティングの中のひとつのキーワードに過ぎなかった「リターゲティング(リマーケティング)」という言葉も、昨今のアドテクノロジーの進化によって今ではインターネットの広告活動において重要な地位を築くまでに成長してきました。
既に自社のWebサイトに導入されていて、「リターゲティング広告」の効果を実感している企業も多いのではないかと思います。
2015年3月にAdRollが発表した「日本のデジタル広告市場に関する業界白書」によると、広告予算の10%以上をリターゲティングに費やしている日本企業の割合は2014年末時点で58%。
その他のパフォーマンス(実績連動型)広告との比較では、国内のマーケターの89%が検索エンジンと同等、もしくはそれ以上の効果があり、91%がディスプレイ広告およびEメールと同等、またはそれ以上と発表しています。
参照元URL:http://markezine.jp/article/detail/22156
この記事では、リターゲティング広告とはどのようなものか、そして精度を高めるためにどのようなことを実施すればよいかについて解説します。
目次
1、リターゲティング広告とは?
そもそもリターゲティング広告とは、Webサイト内の各ページに設置されたリターゲティングタグを元に、自社のサイトを訪れたことのあるユーザに対してCookieを付与し、そのCookieが付与されたユーザに対して嗜好の分析と追跡を行い、過去に閲覧した商品や類似商品などユーザに再訪問を促すような広告を最適化して配信する仕組みのことで非常に費用対効果が高い広告手法です。
リターゲティング広告を導入するメリットは、一度サイトに訪れた購買意欲の高いユーザだけを対象に広告を表示する仕組みが、消費者の購買行動を絶妙に刺激するので費用対効果が非常に高いことにあります。
また、後述しますタグマネージメントツールを使うことで、設計の段階でユーザを絞り込み、見込みの高いユーザにのみリターゲティング広告を配信することができ、さらに精度の高いターゲティングの実現が可能です。
Criteoの調査によれば、オンラインでは98%のサイト訪問者が購入に至らずに離脱しており、購入に至る2%の消費者のうち、40%近くは購入までに1週間以上検討し、サイトに複数回訪問しています。
さらに、90%のコンバージョンは、サイト内におけるユーザと商品・サービスの初めてのエンゲージメントから15日以内に発生します。
検討している間に購買意欲がなくなったり、訪問したサイトを忘れてしまったりと様々な理由で、今まではコンバージョンに結びつかなかったユーザに向けて、タイミングを逃すことなく、ユーザを購入に導くことができるリターゲティング広告は広告主にとって、まさに「かゆいところに手が届く」便利な広告配信システムといえます。
ほかの媒体に比べ比較的効果も高く、一見申し分のないリターゲティング広告ですが、上手く使いこなすにはちょっとしたコツと運用ノウハウが必要になります。
参照元URL:http://www.criteo.com/jp/what-we-do/solutions/
2、リターゲティング広告の精度を向上させる4つのテクニック
ここでは、今まで運用してきた膨大なデータと経験からリターゲティング広告のパフォーマンスをさらに向上させるテクニックを少しだけ紹介します。
1.ページ内の滞在時間によって商品に興味のないユーザを見分けて除外する
サイトへ訪問するユーザの中には、ページ内のコンテンツに興味がない「直帰ユーザ」と成約に結びつく可能性が高い「潜在ユーザ」が存在します。
各ユーザの滞在時間を取得し、短時間にサイトを離脱した直帰ユーザに対してリターゲティングタグを動作させない設定を行うことでリターゲティングリストから除外することができます。
実際の運用実績ですが、あるサイトのセッション時間を見ると3分以内のセッションが全体の約65%となっていました。だたし、3分以上のセッションでのCVが全体CVの80%を占めていることがわかりました。このデータを元にタグの動作を3分以上のユーザに絞ることでCVR45%の改善に成功しました。
滞在時間以外にも商品の多い特性を持つECサイトにはセッション回数によってセグメントする方法もあります。
一般的に、コンバージョンをしたユーザのページビュー数を解析すると、コンバージョンに至らなかったユーザに比べて大幅にセッション数が多い傾向がありますので、商品ページのセッション数が多いユーザに絞り込むなどの施策も場合によっては有効です。
データでは商品詳細ページを2ページ以上見たユーザに絞り込むだけでCVRが11%も改善しました。
※下表参照
2.広告を配信制限したい特定の地域や店舗を除外する
ツアー商品を扱うトラベル事業、ホテル比較サイト、不動産サイトなど全国のお客様を対象とするWebサイトにとっては、エリアによって広告の配信が必要ない時期もあると思います。
この場合、一定の期間だけ対象エリアページのタグを動作させないことで無駄な広告配信を制限することが可能です。
また、Yahoo!タグマネージャーを使ってタグの制御を行っている場合は、フリークエンシーキャップという機能を使って、同じユーザに広告を見せる回数の上限を設定することができます。
この機能を使うことで1ユニークユーザに対して広告を配信する回数の上限を「期間、回数、階層」の項目で詳細に指定することができますので、リターゲティング広告の過度な追跡表示を緩和させる対策にも応用できます。
3.訪問頻度によって商品の検討期間を過ぎたユーザを除外する
取り扱う商材によってもユーザの検討期間は違うと思いますが、共通していえることは商品の検討期間が伸びれば伸びるほどCVRが低下していきます。
リターゲティング広告ではCookieの保有期間を設定することができ、タグマネージメントツールを使うことでタグの動作条件でも詳細に設定することができます。
ディスプレイ広告の過去実績から、リーセンシーごとの効果を算出した結果、訪問から30日以上のユーザを配信から除外する提案をしたところ、施策実施後のコストが35%削減し、CVRが28%改善しました。
4.成約率の低い流入元からのユーザを除外して、興味関心の高いユーザに絞って配信
ビッグワードの種類によっては検索の意図が幅広いため、コンバージョン率が比較的低くなるものもあります。
キーワードの性質から特定のビッグワードからのコンバージョンが低い場合は、特定のビッグワードや外部サイトから流入してくるユーザへのタグ動作を制限することも検討が必要かもしれません。
また、広告からの流入は除外して「google.co.jp」や「yahoo.co.jp」といった自然検索からの流入のみに絞ることも可能です。
※Google広告には、リマーケティング広告でより大きな成果を上げるためのツールとして、Googleアナリティクスから収集できるページビューや滞在時間などの解析データを元に、コンバージョンにつながる可能性の高いユーザを自動的にリスト化することができる、GAリマーケティングの「スマートリスト」というメニューが用意されています。
スマートリストはGoogleのサービスにしか使用することができませんが、Googleアナリティクスで計測したデータを元に見込み客リストを簡単に設定できる便利な機能ですので知っておいて損はないでしょう。
3、まとめ
今回はリターゲティング広告の効果改善で実際に成果のあった4つのテクニックを紹介しました。
リターゲティング広告は商品や商材のデータを使って、すでに関心を持ったユーザに対して広告を配信するため、その性質上、取扱商品の種類が多い、人材・求人業界、小売業・通販業界、不動産業界、旅行・航空業界に特に高い効果が見込まれます。
扱う商材やWebサイトの特性によって改善施策の内容や効果の出るタイミングが違ってきますので、施策と検証を繰り返し行うことで、最も効果の高い最適な設定を見つけ出す地道な作業と中長期的な視点が必要になります。
また、こういったWebの施策や媒体のタグが増えてくると、膨大な種類のタグを設置することになり、作業時間の遅れやページの表示速度の低下につながります。
増えすぎたタグの設定や管理にお困りのマーケティング担当者の方には増えすぎたタグを一元管理できるタグマネージメントツールの導入をお奨めします。
「Yahoo!タグマネージャー」や「Google Tag Manager」のようなタグマネージメントツールを組み合わせて使うことで、作業時間の短縮や管理工数の削減につながり高度な制御が可能になります。
皆さまも、独自の設定を見つけ出すことで、さらにリターゲティング広告の精度を高めていっては如何でしょうか。