目次
はじめに
Webサイトリニューアルの重要性とRFPの役割
Webサイトは、企業の顔とも言える存在です。デジタル時代において、多くの顧客やパートナーとの最初の接点となるのがWebサイトであり、その印象や使い勝手はビジネスの成功を左右することがあります。そこで、時代の変化やビジネスニーズに応じて、Webサイトのリニューアルは避けて通れない課題となっています。
しかし、リニューアルのプロジェクトは簡単ではありません。特に、Webサイト発注経験が少ない担当者にとっては、どのように進めれば良いのか、何を重視すべきなのかが分からないことも多いでしょう。そこで役立つのが「RFP」、すなわち「Request For Proposal(提案依頼書)」です。
RFPの定義とその目的
RFPとは、発注者が提案を求める際に出す提案依頼書のことを指します。このRFPを通じて、発注者は自社のニーズや要望を明確にし、それに基づいて最適な提案を受け取ることができます。RFPは、発注者と提案企業との間のコミュニケーションツールとしての役割を果たし、リニューアルプロジェクトの成功に向けた第一歩となります。
RFPの目的は、自社の要望や課題を明確にし、それに対する最適な解決策を提案してもらうことです。また、RFPを通じて、提案企業の能力や過去の実績を確認し、信頼性や適切性を判断する材料ともなります。
Webサイトのリニューアルは、企業の成長やブランドイメージの向上を目指す上での重要なステップです。その成功のためには、適切なRFPの作成が欠かせません。この記事では、失敗しないためのWebサイトRFPの作り方を詳しく解説していきます。
RFP作成の前の下準備
WebサイトリニューアルのRFPを作成する前に、いくつかの下準備が必要です。 下準備をしっかり行うことで、RFPの品質が向上し、提案企業とのコミュニケーションがスムーズになります。
関係部署やプロジェクト担当者とのヒアリング
RFPを作成する前に、関係部署やプロジェクトの担当者とのヒアリングは欠かせません。これにより、企業全体のニーズや要望を正確に把握することができます。ヒアリングを行うことで、リニューアルの方向性や必要な機能、期待する成果などの詳細を明確にすることができます。ヒアリングでは、以下のような点を確認します。
- Webサイトの現状や課題
- 活用状況
- リニューアルの目的や目標
- 期待する効果や成果
- 必要な機能やコンテンツ
- 参考にしたいサイト
ヒアリングを行うことで、Webサイトリニューアルの方向性や要件を明確にすることができます。 また、関係者の意見やニーズを反映させることで、プロジェクトへの理解や協力を得ることができます。ただ、一点気をつけなければいけないのは、全てを盛り込みすぎて、Webサイトリニューアルの目的を見失わないようにすることです。予算や期間は有限ですので、各所から上がった要望は、優先順位をつけて整理する必要があります。
現在のWebサイトの課題点の洗い出し
Webサイトリニューアルを成功させるためには、現在のWebサイトの課題点を洗い出すことが必要です。 課題点を洗い出す方法としては、以下のようなものがあります。
- アクセス解析
- ユーザー調査
- 競合分析
- ヒューリスティック分析(専門家による分析)
これらの方法を用いて、現在のWebサイトがどのような問題を抱えているか、どこを改善すべきかを明らかにします。 課題点を洗い出すことで、RFPに具体的な改善策や要望を記載することができます。
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リニューアルのKPIの明確化
Webサイトのリニューアルに際して、成功を測るためのKPI(Key Performance Indicator)を明確に設定することが重要です。KPIは、リニューアル後のWebサイトが期待通りの成果を上げているかを数値で示す指標となります。例えば、訪問者数の増加、滞在時間の延長、コンバージョン率の向上などが考えられます。
しかし、Webに対するリテラシーが低い企業の場合、どのようなKPIを設定すれば良いのか迷うこともあるでしょう。そのような場合、外部の専門家やコンサルタントの意見を取り入れることを強く推奨します。「現在のWebサイトの課題点の洗い出し」で触れた、「アクセス解析」を専門家に依頼相談することで、現状把握と目指すべき指標を提示してもらうことができます。
KPIを明確にすることで、リニューアルの方向性を数値的に捉え、提案企業もその目標に合わせた適切な提案を行いやすくなります。また、リニューアル後の成果を定量的に評価する基準としても活用できます。
予算と期間の設定
リニューアルプロジェクトには、予算や期間の制約があることが多いです。これらの制約を明確にすることで、提案企業が現実的な提案を行うことができます。また、予算や期間を明確にすることで、プロジェクトの進行や範囲を適切に管理することができます。
これらは、CMSの有無や、新規ライティングの量、ページ数によって大きく変動します。どの程度の予算や期間が適当なのか目安がわからない場合は、専門家に相談の上、概算を算出したり、予算に合わせて与件の内容を縮小したり、適切な対応が必要となります。
RFPの主要な要素
プロジェクトの概要
目的を具体的にすることで、提案企業もより明確な提案をしてくれます。例えば、「月間PVを10%アップさせる」など、数値で目標を設定するとより効果的です。 範囲を明確にすることで、提案内容がブレにくくなり、無駄な部分を省くことができます。
プロジェクトの背景: リニューアルに至った背景を具体的に記述します。例えば、「既存サイトのアクセス数が減少している」「競合との差別化を図りたい」など。
プロジェクトの目的: リニューアルによって達成したいことを明確に記述します。例えば、「ブランドイメージ向上」「売上アップ」「顧客満足度向上」など。
プロジェクトの範囲: リニューアルの対象範囲を具体的に記述します。例えば、「全ページのリニューアル」「特定ページのリニューアル」「新規ページの追加」など。
プロジェクトのスケジュール: 大まかなスケジュール感を示します。
現在のWebサイトの状況
下記のようなツールを使って、現状の分析データを提示すると、サイトの課題を明確にすることができます。ただ、これらの分析を行うにも専門知識が必要になるので、必要に応じて専門家の支援を受けるか、Google Analyticsのアクセス権限を付与して分析を含めて提案してもらうようにしましょう。
アクセス解析データ: Google Analyticsなどのデータから、ページビュー数、滞在時間、直帰率、コンバージョン率などの具体的な数値を示します。
ヒートマップ: ユーザーの行動を可視化し、問題点を特定するためのヒートマップのデータなどを提示します。
ユーザーテスト結果: 実際にユーザーにサイトを使ってもらい、課題を洗い出した結果を提示します。
ターゲット顧客
ターゲットを設定することで、デザインやコンテンツの方向性が定まりやすくなります。
ペルソナ: 理想的な顧客像を具体的に設定します。ペルソナの設定は、デザインやコンテンツの設計に大きな影響を与えます。
カスタマージャーニー: 顧客がサイトに訪れる前から、購入や問い合わせに至るまでの行動を可視化します。
競合分析: 競合サイトの強みと弱みを分析し、自社のサイトがどのように差別化できるか検討します。
要件定義
①機能要件:
必須機能: 問い合わせフォーム、会員登録、商品検索など、絶対に必要な機能を詳細に記述します。
希望機能: 導入を検討している機能を具体的に記述します。
非機能要件: システムの性能、セキュリティ、保守性など、機能以外の要求事項を記述します。
②デザイン要件:
デザインコンセプト: サイト全体の雰囲気やイメージを言葉で表現します。
デザインガイドライン: 既存のロゴ、カラー、フォントなど、デザインのルールを提示します。
レスポンシブデザイン: スマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスに対応する必要があるか明確にします。
③コンテンツ要件:
コンテンツの種類: テキスト、画像、動画、動画コンテンツなど、既存サイトに加えてどのような種類のコンテンツが必要か記述します。
対象ページ: 既存サイトで移行が決定しているページ、改修が必要なページ、削除するページ、移行しないページを区分けします。添付資料としてサイトマップを作成し、既存サイトに対して色分けをすると、わかりやすくできます。
既存サイトのページ抽出には、フリーソフトのWebsite Explorerを使うと、簡易に作成できます。
リンク先:https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/websiteexp/
③技術要件:
CMS: 導入を検討しているCMSの種類やバージョンを指定します。
サーバー環境: サーバーのスペック、OS、データベースなどを指定します。
セキュリティ: セキュリティ対策として、どのような対策を講じるか記述します。
提案要求
提案書の内容: 提案書に含めてほしい項目を具体的に記述します。例えば、「現状分析」「改善提案」「スケジュール」「費用見積もり」など。
提案プレゼンテーション: 提案プレゼンテーションの実施有無、時間、参加者などを指定します。
評価基準
技術力: 提案された技術の革新性、実現可能性、将来性などを評価します。
デザイン力: デザインの独創性、美しさ、ユーザビリティなどを評価します。
コストパフォーマンス: 予算との整合性、費用対効果などを評価します。
スケジュール: プロジェクトのスケジュール遵守能力を評価します。
コミュニケーション能力: 提案企業とのコミュニケーションの円滑さを評価します。
その他
知的財産権: 著作権、特許などの扱いについて明確にします。
機密保持: 提案内容の機密保持に関する契約について言及します。
契約条件: 契約に関する一般的な条件を提示します。
RFPの書き方のポイント・注意点
「課題」と「目的」を明確に伝える
RFPの中で最も重要なのは、現在のWebサイトの課題と、リニューアルによって達成したい目的を明確に伝えることです。これにより、提案企業は具体的な解決策を提供することができます。
分からない項目は飛ばしても良い
全ての項目に答える必要はありません。不明確な点や自信がない部分は、後で専門家や提案企業とのミーティングで詳しく話し合うことができます。
役割範囲の明確化
RFP内で、発注者と提案企業の役割範囲を明確にすることで、後々のトラブルを避けることができます。例えば、コンテンツの作成や写真撮影、ドメインの取得など、どの業務を誰が担当するのかを明記しましょう。
必須項目と任意項目に分ける
明確で具体的な情報提供の重要性
抽象的な表現や曖昧な要望は避け、具体的な数字や期待する結果を明記することで、提案企業も具体的な提案をしやすくなります。
予算や期間の現実的な設定
予算や期間は、現実的な範囲で設定することが重要です。過度に厳しい予算や短い期間を設定すると、質の高い提案を受けることが難しくなる可能性があります。
まとめ
Webサイトのリニューアルは、企業のブランドイメージやビジネスの成功に直結する重要なプロジェクトです。その成功の鍵となるのが、適切に作成されたRFPです。RFPは、発注者の要望や課題を明確にし、提案企業とのコミュニケーションを円滑に進めるためのツールとしての役割を果たします。
とはいえ、すべての項目を完璧に固める必要はなく、「こうしたい」という希望や、「提案してほしい」という要望を明確にするだけでも十分です。
RFPは、あくまで提案を依頼するためのたたき台です。提案企業との対話を通じて、より具体的な内容を詰めていくことができます。最初から完璧なRFPを作成しようとせず、柔軟な姿勢でプロジェクトを進めることが大切です。
本記事を通じて、RFPの作成の前の下準備から、RFPの主要な要素、そしてRFPの書き方のポイントや注意点までを詳しく解説しました。特に、課題や要望の明確化、役割範囲の設定、そして予算や期間の現実的な設定は、RFP作成の際の重要なポイントとなります。
本記事では、RFP作成の基礎知識から、具体的な書き方、そして成功させるためのポイントまでを解説しました。RFP作成に不安を感じている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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