目的
- グループ全体のマーケティング分野におけるデジタル活用の推進
- お客様理解の高度化
- 自走できる社内環境の構築
課題
- GA4だけではデータの保持期間や粒度が分析において不十分だった
- BigQueryやSQLのスキル、ノウハウが社内になかった
実現したいこと
- お客様の解像度をより上げていくためのBigQueryのデータ活用
- 設定やレポートのみならずPDCA運用のフロー化を進め、品質向上と効率化を図る
近年、お客様理解の重要性がますます高まり、多くの企業がGA4への移行を契機にデータ活用を強化しています。
AGC株式会社では、複数のウェブサイトをマーケティングで活用しており、各サイトのお客様理解をより進めていく必要性を感じていました。そのためのレポート環境の構築や効果的な分析のためのフロー化、そして将来的には自社内でデータ活用を主導するための技術習得を積極的に推進しています。今回は、同社デジタル・イノベーション推進部の田家様、高野様、岡本様に話を伺いました。
お話を伺った方
AGC株式会社
デジタル・イノベーション推進部
デジタルソリューショングループ
ビジネスソリューションチーム
マネージャー
田家 敦史
AGC株式会社
デジタル・イノベーション推進部
デジタルソリューショングループ
ビジネスソリューションチーム
マネージャー
高野 茂喜
AGC株式会社
デジタル・イノベーション推進部
デジタルソリューショングループ
ビジネスソリューションチーム
岡本 奈美
すべてはお客様理解のために
AGC株式会社は、コア事業の深化と戦略事業の探索による「両利きの経営」の実践を目指しており、2022年の売上高は2兆円を超える成長を遂げています。
同社のデジタル・イノベーション推進部は、現在、AGCグループ全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、デジタル技術活用によるビジネス貢献に繋げる役割を担う部門です。単にシステムやツールの導入ではなく、社内でのデジタル化によるイノベーションを促進し、ビジネス効果を最大化するための事業支援をミッションとしています。
近年では、スマートフォンの普及や購買行動の変化など、顧客のニーズと行動を的確に捉えたマーケティングがますます重要性を増しています。同社では、市場の変化に適応しながら、さらにお客様理解の水準を向上させる方法を模索していました。
GA4利用をきっかけに、データ蓄積・活用を進めるプロジェクトを開始
田家氏 昨年の3月頃、UAの停止が発表された際にGA4を使ってみたところ、予想以上に色々変化していること、特にデフォルトのデータ保持期間がわずか2ヵ月だということに驚きました。GA4だけでは長期間のデータ分析が制約されることを懸念し、対処方法を探る中でBigQuery連携が最適な解決策と感じたため自然な流れで導入を決定しました。まずはデータ蓄積を進め、その後お客様理解のためデータをどう活用するかに課題がシフトしていきました。
蓄積したデータを活用するフェーズにおいての問題点は、GA4がUAとはUIも大きく異なり、現場のメンバーにGA4の活用を奨めても使いこなすことは難しいだろうという点でした。そこで、誰でも使えて、標準レポートよりも深い分析が可能なレポートパッケージの提供を考え、GA4とLooker Studioを結びつけるプロジェクトを開始しました。その中で、BigQueryを統合しなければ、蓄積したデータの有効活用が難しいことに気づき、必然的にBigQueryとLooker Studioを統合してレポーティングする方法を構築することが必要となりました。
組織の今後を見据えて、自社スキル習得とアウトソースのバランスを重視
GA4のデータを直接Looker Studioで読み込み、レポートを作成することが社内完結で実現できると考えていた同社ですが、BigQueryのデータを活用してレポートを作成する場合、ハードルが急に高くなり、さらにGoogle Cloudの管理も必要になるため、自社内で完結するのは難しいと判断しました。
田家氏 もともとSQLを扱えるメンバーはいませんでしたが、マーケティング施策を進めていく上で見たいデータを自分達ですぐに出せるかどうかが、今後データ活用を進めていく際に非常に重要だと思います。そのため、完全に外部にアウトソースするのではなく、我々自身もBigQueryのスキルを身につけ、GA4~BigQuery~Looker Studioの一連の流れを自分たちが扱えるようにするための環境を整える必要がありました。このように、アウトソースと自社スキルのバランスを取り、効率的かつ確実に前進することを考えていました。
同社はアウトソースのパートナーとしてメディックスを選び、データ活用のための歩みを進めることになりました。
BigQueryとLooker Studioを活用したレポーティング環境の構築と、自社で環境構築できるようにするための技術習得支援
<メディックスとの取り組み内容>
サービスや事業ごとに複数存在するウェブサイトに対して、次のような取り組みを実施しています。
・有効なレポーティングを行うためのGA4の設定見直し
・GA4モニタリングダッシュボード(BigQueryとLooker Studioを活用したGA4のレポーティング環境)の構築
・同社が自分たちで環境構築できるようになるための技術習得支援
高野氏 技術習得支援では、毎月BigQueryにエクスポートされたGA4のデータ構造の解説や、そのデータを集計するためのSQL構文の解説などの講義を受けています。毎回宿題もあって、SQLを自分たちで考えて作り、次回の講義に答え合わせをするようなことを行っています。毎回宿題に追われて大変ですが、手取り足取りメディックスに教えてもらって非常に助かっています。
そして、講義を受けてみて、やはりBigQueryにエクスポートしたGA4のデータの扱いは非常に難しいと感じています。
すでに一部のウェブサイトでは、メディックスのGA4モニタリングダッシュボードを提供しており、それをモデルケースとして、同社では自分たちだけの力でレポーティング環境の構築を行えるように取り組んでいく予定です。
そういった自社内で自走できる環境構築という点では、マニュアル化も推進しています。
同社ではこれまで、数あるウェブサイトに対してGoogleAnalyticsの導入設定やレポーティング構築などの初期の環境構築を行っていました。しかし、その都度カスタマイズするため非常に負荷がかかっていました。そのような状況を改善するために、「初期設定マニュアル」の作成も並行して進めていました。
岡本氏 初期設定マニュアルといっても、どういう設定をするのが正しいのか手探りで進めていました。そんな時にメディックスに相談しました。お取組みの範囲外にも関わらずとても親身に様々なアドバイスをいただいたことで、何とか完成させることができました。今では自信をもって全社展開できる内容になっていると思います。
我々と一緒に歩んで行ってくれそうな会社がメディックスだった
同社はメディックスとの取り組みを始める前に、実は3社に声をかけて支援を行ってくれる企業を選定していました。その中で、なぜメディックスを選んだのかを聞きました。
田家氏 どの会社も一定以上の知識や技術は持っていたと思いますが、メディックス以外の会社は、どうしても売りたいものが先にあって提案をしていきている印象でした。一方で、メディックスはこちらの求めるものに対応してくれるというスタンスを感じましたし、こちらが言っていることをきちんと理解した上で我々の現状に最適なソリューションを提案してくれるなど、コミュニケーションも非常にスムーズでした。
高野氏 実際にメディックスの技術的なところは期待どおりでしたが、逆に、そんなことまで教えてくれるんだ、ということにびっくりしています。普通の業者であれば自分たちの技術を出し惜しみすることもあると思いますが、メディックスからは我々のために出し惜しみせず、丁寧にレクチャーしてもらっています。
PDCAフローのテンプレート化と、お客様理解のためのさらなるデータ活用に向けて
最後に、同部門での今後の展望や実施していきたいことを担当者に聞きました。
田家氏 今後やりたいことは2つあります。1つ目は、設定やレポートのテンプレート化だけではなく、マーケティング実務のPDCAを回す際のフローや進め方も標準化できる範囲はテンプレート化していきたいと思っています。テンプレートに従っていけば、ある程度のクオリティのものを効率的に進めていけるようになると考えています。そして2つ目はお客様理解のためのデータ活用です。お客様の解像度をより上げていくためのBigQueryによるデータ活用というのがポイントになってくるはずですし、それらはぜひ、メディックスと二人三脚で進めていきたいと思っています。
BigQueryのデータ活用は、メディックスでも積極的に行っている領域です。同社と今後さらなる取り組みを進めて、新しくウェブサイトを立ち上げた場合の基盤になるようなプラットフォームも作り上げていきたいと考えています。
AGC株式会社
事業内容:ガラス、化学品、ディスプレイ、セラミックス、モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンス
設立:1907年9月
従業員数:7,412名(2022年12月31日現在)
https://www.agc.com/
田家氏 デジタル活用における競争のポイントは「お客様理解」と考えています。今はお客様との距離が近くなり、お客様の解像度を高める手段も急速に進化しています。そういった市場環境で戦っていくために、事業部にデジタル活用の重要性や可能性を理解してもらい、実際の業務に取り入れていくことを目的としています。これまでの営業スタイルやお客様へのアプローチがデジタル化の影響を受けて変化する中、事業部の意識を変革することも我々の重要なミッションです。